緊急事態のもとで2週間が過ぎました。
浦河ひがし町診療所は、外来診療はほぼそのままです。精神科デイケアは今週から一部を再開しましたが、デイケアに来られない人に対し訪問看護を大幅に増やしています。
それでどうだったか。
きょうはその振り返りと、来週以降どうするかをミーティングで話しあいました。

患者やデイケアのメンバーに、大きな動揺はありません。
こちらからの訪問を増やした結果、かえってみんなに安心してもらえたかもしれない、ふだんとはちがう形で患者と会えてよかったというコメントが、訪問看護にあたった看護師のあいだからいくつも聞かれました。
デイケアで話を聞くのと、自宅まで行って聞くのでは話の中身がちがいます。相手の現れ方もちがう。こちらから訪ねるということを大事にしたほうがいいと、診療所の精神科医、川村敏明先生はいいます。

一方、コロナだったからSOSを出せたという人も何人かいます。
学校が休校になり、子どもが家にいて親も子もストレスを抱えてしまったようなケースです。そうしたケースへの対応がいかにもひがし町的でした。すなわち、有能な看護師やワーカーが駆けつけてテキパキと解決するのではない形です。
子どもの相手をする人、親の相手をする人、そのあいだでうろうろする人。入れかわりたちかわりいろいろな人がかかわりながら、なんだかよくわからないうちに、どうにか急場はしのいでいる。

そういう展開を見ながら、川村先生はいいます。質より量、と。
しっかりした人がひとりでするのではなく、しっかりしていないたくさんの人がさまざまにかかわって進める支援。それが支援を受ける側には安心となって伝わるのだと。

ストレスを抱えた親子の場合も、急場はしのいでいるけれど問題の根本は何も解決していない。そもそもひがし町診療所の人たちには、解決しようという意志がないのかもしれません。少なくとも「すぐにスッキリ」解決できるとは思っていない。
でもどういうわけか、ぼくはそれで全体としてうまくいっている感じがするのです。
精神科を見なれていない人にはとてもわかりにくい感じだとは思うのですが。
ともあれ診療所のデイケアは来週から、活動プログラムを段階的に復活していく方針です。
(2021年5月28日)