先月、まだ浦河にいたころです。
かねて知り合いの精神障害の当事者に、ぱったりと道端で出会いました。
やあ、こんにちは、元気ですか。
元気です、でもこのあいだ入院したんですよ。
久しぶりだね、入院するの。
ぱぴぷぺぽ状態になって。
ニコニコしながら、彼は語ってくれました。
精神科病院への入院が、道端で笑い話のように語られる。
ほかの町では、なかなかこうはいかないようです。

どこの病院に入院したのか聞いたら、江別市のすずらん病院といっていました。その病院の名前を、最近何人かの当事者から聞くようになりました。
あそこ、なかなかいい病院ですよ。
浦河から車で3時間かかるけれど、遠くても行く価値があるのでしょう。そういう病院があることは、当事者にとって選択肢がひとつ増えたことになります。

浦河ひがし町診療所は、地元ではよく「施設入所をさせない診療所」といわれます。
問題の家庭があっても、子どもをなかなか養護施設に入れない、精神障害者を精神科病院に入院させない、認知症の人を老人病院に入れない、というような意味です。でもそんなことはない。
できるだけ当事者を応援し、自分たちでやってみるというやり方が、町の人たちには煙たく見えることもあるのでしょう。でも診療所が外部の施設、機関との連携を避けているなんてことはありません。

精神科への入院がそうです。患者のなかには、ときには入院が必要な人もいる。そういう人に、むりにがんばれとはいわない。入院するかどうかは自分で決める。それができるよう、できるだけの応援をするということです。
そうではあるのだけれど、ここ1,2年、少しずつまた入院が増えてきました。それはすずらん病院のようなところができて入院の敷居が下がったのか、それとも当事者をめぐる浦河の町の状況が荒れてきたのか、どちらなのかはやや気になるところです。
(2021年6月20日)