ひとり暮らしへの挑戦

 デイケア・メンバーの大貫めぐみさんが、ひとり暮らしに挑戦です。
 いや、ひとり暮らしではないかな。息子のタックといっしょだから、二人暮らしというべきでしょうか。いずれにしても、4年あまり住み慣れた浦河ひがし町診療所のグループホーム「すみれ2」を出て、近くにある町営アパートの一室に引っ越すことになりました。
 きょうはデイケアの仲間やスタッフとともに荷物運びです。

 大貫さんは4年前、浦河で3人目の子ども、タックを出産しています。
 統合失調症で、最初の2人の子は自分で育てることができませんでした。3人目を妊娠したときも、「子育ては無理」と関係者はいいました。
 でも、ひがし町診療所はそうは思わなかった。
 統合失調症があっても大丈夫。過去に失敗していても、こんどは診療所がある、安心して子どもを産んでもらおう、そしてみんなでいっしょに育てようと支援の輪をつくりました。
 おかげで、大貫さんはグループホームで暮らしながら子育てをすることができました。紆余曲折と、数々の失敗はあったけれど。

 4年のあいだ、タックはすくすく成長しました。グループホームのひとり部屋は狭くなり、町営住宅に移ることになりました。それまでの仲間やスタッフ、ボランティアの支援が常時ある環境から、町のなかで、地域社会で暮らすことにしたのです。

「たいへんな出世だ」と、デイケアの仲間は冗談をいいました。
 グループホームから町営アパートへ。形の上では自立でも、それがかんたんでないことは本人も仲間も診療所のスタッフもよくわかっています。
 これからが、ほんとうのはじまり。
 新しい問題が際限なく起きるでしょう。でも、やめようという人も、たいへんだと身構える人もいません。
 数日前からはじまった引っ越し作業には、たくさんの仲間やスタッフが参加しています。

「すみれⅢ住居ミーティング」に出た
大貫めぐみさん

 さいわいなことに、新しい住居のすぐそばには男どもが住むグループホーム「すみれⅢ」があります。大貫めぐみさんは、このグループホームの“準構成員”のようになって、週に一度開かれる住居ミーティングに参加することになりました。息子のタックも、ここでときどき風呂に入れてもらえるでしょう。
 そういうふうに、たくさんのいろいろなかかわりがあって大貫めぐみさんの新しい生活ははじまろうとしています。
 すべてが、いかにもひがし町診療所的に進んでいます。
(2021年9月1日)