きのうも浦河は熱暑日、気温が25度を超えました。
庭の草刈りはやめて、午後は映画を見に行きました。大黒座まで。
観客3人、ほどほどの入りです。
見たのは、去年公開の「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領」。
南米、ウルグアイの大統領だったホセ・ムヒカさんの映画です。日本のテレビ局にいた人がつくったので、ワイドショー向けといった感じの記録映像でした。
もったいないなあ、というのが見終わっての感想です。
たいへんな時間と労力をかけながら、ムヒカさんを描ききれていないんじゃないかと。

(映画公式サイトから)
ムヒカさんの名を世界に知らしめたのは、彼がウルグアイの大統領だった2012年、国連の会議で行った演説です。
持続可能な開発を議論する会議で、ムヒカさんは訴えました。
われわれは発展するために生まれてきたのではない。幸せになるために生まれてきた。
貧困は、ものがないことではない。多くを持ちながらもっと、もっとほしいと思うことだ。
彼のことばは、会議を超え、ときを超えて多くの人に届きました。
その演説は、日本では絵本にもなっています。

(くさばよしみ編 中川学絵、汐文社 2014年)
ムヒカさんは、生涯をかけて社会正義のために戦いました。かつては有名な武装集団「ツパマロス」のリーダーとなり、なんども逮捕投獄されています。軍事政権の終焉とともに政治への道を歩み、国民の信をえて大統領になりました。
ムヒカさん自身もすごい人だとは思うけれど、そういう人が大統領になったウルグアイという国もすごい国です。深く尊敬します。

「自由な社会主義」を信条とするムヒカさんは、自身のなかに多くの矛盾を抱えています。その矛盾を統合しているのは、生身のムヒカであり、彼のことばであり、彼を取り巻くひとびとのつながりです。80年の生涯が、海のように深く広い世界として広がっている。
映画は、そういう巨人をわかりやすくひとことでまとめようとする。それがかなわず散らばってしまった。監督玉砕です。それもまた演出でしょうが。
けれど、「つくり」を超えて伝わる「映像」がある。
こころに残る場面がいくつもありました。
ホセ・ムヒカという人の味わい、困惑と信念、風雪の名残り、情熱、彼を見る妻の視線。
そうした場面を、もうすこし素材の味わいを生かして見せてくれればよかったのですが。
(2021年8月9日)