アボカド泥棒

 アボカドを窃盗団がねらっている。
 アフリカのケニヤでは、収穫前のアボカドをねらう盗賊と自警団のあいだで、死人が出る争いも起きているそうです(Kenyan vigilantes taking on avocado gangs. 15 Jan. 2022, BBC)。

 世界的な健康志向で、アボカドの需要は増す一方です。
 ケニヤでは、1本の木から収穫できるアボカドが年間600ドルにもなり、アボカドは「緑の金(きん)」と呼ばれるようになった。いまやケニヤはアフリカ第1位のアボカド生産国です。
 この果実をねらって、窃盗団がはびこっている。

 中部の産地ムランガでは、夜になると自警団が見回りに出ます。厚手のレインコートを着て懐中電灯を持ち、マチェット(ナタ)と棍棒で武装して。
「やるかやられるか。自分の身を守らなきゃならないから不幸も起きる」と、自警団のひとりがいいます。最近泥棒のひとりが殺される事件がありました。
「何か月もかけて育てたのを、一晩で盗っていくんだから」

 アボカド栽培農家のキニャ・ムブルグさんは、4ヘクタールの土地で200本のアボカドを栽培しています。盗難対策に監視カメラを使い、ドローンの活用まで考えている。先日は自警団が窃盗団のアジトを突き止め、隠してあった多量のアボカドを発見しました。警察に通報したけれど、それは事件解決のためではなく、怒った村人が窃盗団を「人民裁判」にかけて殺すのを防ぐためでした。それほどまでに村人は怒っている。
 ムブルグさんはいいます。「ここでは5年後に、ほとんどの農家が紅茶栽培をやめてアボカドに切り替えるだろう」
 アボカドはペルーやブラジルが大生産国ですが、やがてケニヤも肩を並べるでしょう。

 ぼくはアボカドが好きでよくサラダに使います。ここ数年、状態のいいアボカドが安くたくさん出回るようになり、流通の変化を感じていました。アボカドもまた大量生産、品質管理の波にもまれているんですね。
 消費者としては歓迎すべきだけれど、不安も覚えます。アボカドですら、単一品種大規模栽培に向かっているのだろうか。やがてぼくらは、大きくてきれいで見栄えがよくて、これまでより高価なアボカドしか手に入らなくなるんじゃないか。
 暮らしの基本は地産地消。アボカドを好んで食べるという暮らしも、少しずつ見直したほうがいいのかなと思いはじめています。
 ケニヤの盗賊が活躍しないように。
(2022年1月17日)