アマゾンへの抵抗

 このままでは出版文化が破壊される。
 そう考えた人たちが、本の配送は「一定以上の料金を取らなければならない」と決めました。
 アマゾンの無料配送は違法です。フランスでは、ですが(France sets minimum book delivery fee in effort to protect independent stores from Amazon. October 26, 2021, The Washington Post)。

 どの国でもアマゾンは出版社、書店を追い詰めています。
 ネットで注文すれば翌日には届くし、有料会員になれば送料は無料。多くの読者はこのアマゾン商法に引かれ、書店に行かなくなりました。これにコロナが拍車をかけた。ステイホームでも本を読む時間はたっぷりあるから、アマゾンで取り寄せる。町の本屋さんはますます苦しくなりました。

 しかし本屋は文化の柱、とフランス政府は考えます。
 出版の苦境を座して見過ごすわけにいかないと、新しい法律をつくりました。本の配送には、一定以上の配送料を取らなければいけないと決めたのです。
 じつはフランスはすでに2014年、配送料を無料にしてはならないという法律をつくっています。するとアマゾンは対抗措置として、配送料を約1円にまで下げてしまった。一般的な書店は配送料700円くらいないので、とても太刀打ちできない。

 そこで、フランスでは本の配送料に政府が補助を出すことにしました。
 それでもアマゾンの勢いは止まらない。ついに「一定以上の配送料を取らなければならない」と決めたのです。「一定」がいくらになるかは、これから決めるようです。
 こうなるともうほとんど、アマゾン対国家の戦いですね。
 そこまでして戦うフランスはえらい。

 書店事情に詳しいハーバード・ビジネス・スクールのライアン・ラファエリ准教授はこういいます。
「これは書店を国の文化として見直そうとする動きだ。アマゾンは価格と品ぞろえで市場を支配するが、それで“共同体と文化”に対抗するのはむずかしいだろう」
 なるほど。これは金もうけと文化の戦いでもあるんですね。
(2021年10月31日)

***  このブログははじめてちょうど1年になりました。コロナが少し落ち着いたので、ぼくも自宅から出る時間を増やします。11月からややペースが落ちますが、これまでのように、気が向いたらのぞいみてください。