この夏の東京オリンピックじゃありません。
ボイコットでもありません。
オリンピックのスポンサー企業に「手を引きなさい」といっているのです。
来年の、中国が開催する冬季五輪から。
ワシントン・ポスト紙の社説が呼びかけました(Companies must boycott the Beijing Olympics. Opinion by the Editorial Board, The Washington Post, April 2, 2021)。

もちろん中国の目に余る人権侵害の数々をあげて。
アメリカ国務省の報告書は、中国の新疆ウイグル自治区で去年100万人以上が投獄され、不妊手術を強制され、強姦と拷問を受けたと述べています。そのほかにも200万人が「再教育訓練」でウイグル文化を奪われている。つまりイスラム教とウイグル語を否定されている。
香港の人権派抑圧、先週のBBC北京特派員の事実上の追放。そんな中国が国威発揚のために行う来年の冬季オリンピックはとても認めるわけにいかない。

社説は語りかけます。
エアビーエヌビー、コカコーラ、GE、VISAといった大企業は、オリンピック委員会に1000億円を超す協賛金を貢いでいる。それ、やめませんかと。
来年の冬季オリンピックを支えるのは、中国政府がしているのを認めること。あなた方は少数民族の強制労働を、人権派市民や弁護士に対する弾圧を、ジャーナリストへの脅迫を認めるのですか。
ワシントン・ポストは、これまでも冬季五輪からの撤退を呼びかけています。今回あらためて呼びかけたのは、バイデン政権が中国のウイグル政策を「ジェノサイド」と断定したからです。
注目されるのは、この社説が選手のボイコットを呼びかけるのではなく、スポンサー企業に撤退を呼びかけていることでしょう。

ポスト紙はいいます。
「オリンピックにかかわる西欧企業の前には、ひとつのシンプルな問いがある。あなた方はジェノサイドの国のオリンピックを支えるのか。答えはひとつ。そんなことはしない、だ」
来年じゃなく、ことしのオリンピックで浮足立っている国ではこんな議論、起きないですね。さびしいだけじゃなく、ちょっと不安に思います。
(2021年4月3日)