あみぐるみ? 何、それ?
調べてみると、編み物でつくった小さなおもちゃのこと。
つまりニットのぬいぐるみらしい。「ぬう」のではなく「あむ」から「あみぐるみ」。
ウィキペディアにもないから、かなりマイナーな新語です。
でも最近のアメリカで、そしておそらく日本でも、あみぐるみをつくる人は増えている。そのあみぐるみがなんとワシントン・ポストの記事に出てきました。「アミグルミ amigurumi は日本語で“編んだ小さなおもちゃ”の意味です」と。

ちょうど「絵文字」や「旨味」、「津波」といった日本語が、emoji, umami, tsunami と表記されて英語になっているように、あみぐるみも日本語がそのまま英語になっているんですね。
さて、話はここからが本題。
ワシントン・ポスト紙の記事は、アメリカの副大統領、カマラ・ハリスさんが町のブティックに現れたということだったのです。それも、編み物の毛糸を買いに(Vice President Harris is making her mark on the Washington-area crochet scene. April 13, 2021, The Washington Post)。

(ホワイトハウス公式サイト)
店の人が聞くと、ハリスさんはいったそうです。
「あたし、アフガン編みはいやというほどやったのよ。何しろ母は、テレビなんか見る暇があったら編み物しなさい、っていってたから」
へえー、アメリカの副大統領ってアフガン編み、かぎ針編みの達人なんだ。
編み物業界に、たちまちうわさが広がりました。ネットのあちこちで編み物ファンの興奮状態が出現したとか。即座に出てきたのが「カマラ・ハリスのあみぐるみ」だったそうです。

もちろんハリスさんだけではない。詩人のアマンダ・ゴーマンや若者に人気の上院議員バーニー・サンダースといった、人気キャラクターが次々あみぐるみになっている。そういう流行は、あみぐるみのパターン、つまり編み方がネットでどんどん公開されているから。編み物はいまやおばあさんの手仕事ではなく、パンデミック下のトレンドなんですね。
毛糸ブティックの店員がいっていたそうです。
「副大統領が女性で黒人で、アジア系で移民の子だってとこがいいのよね」
自分たちにはこんなに親しみを持てる政治家がいる。そう思える人たちはしあわせです。
カマラ・ハリスさんのためにひとこと付け加えておきましょう。ブティックで毛糸を買ったのは、大学でニットを専攻する娘のためだったらしい。そりゃそうでしょう。自分で編む暇なんて、いまのハリスさんにあるはずがない。
(2021年4月14日)