カワウソの冒険

 横断歩道をカワウソが渡っている。
 ウソだろ、と思うけどカワウソです。
 シンガポールの中心部で、カワウソが集団で堂々と歩いている。その姿をワシントン・ポストが伝えていました(Otters are taking over Singapore. Oct. 22, 2021, The Washington Post)。

https://www.washingtonpost.com/wp-apps/imrs.php?src=https://arc-anglerfish-washpost-prod-washpost.s3.amazonaws.com/public/35Q5FXBRNUI6ZABWPWZFLP7ROY.jpg&w=767

 もっとびっくりするのは、市街地にあるマンションのプールでしょうか、そこをスイスイと、これもまた集団で渡っていく動画です。

https://wapo.st/3jeY5XF

 カワウソって、自然ゆたかな山奥か人里離れた川に住んでいるとばかり思っていたら、都会の真ん中でも暮らしていけるんですね。
 でもまたなんでシンガポールなんだろう?

 このアジアの先端都市には、10家族以上のカワウソが住みついています。
 1970年代以降の都市化による汚染と生息環境の消滅で、カワウソは姿を消したと思われていました。それが河川の浄化と緑化が進んだせいでふたたび姿を現したようです。しかも交通や人の流れをぬって動きまわることもできるようになって。
 水際にあるこの町には縦横に走る水路があり、そこを勝手気ままに移動しているらしい。そして魚を食べながら生きのび、増え、通りや庭や大学のキャンパスにひょっこり顔を出すようになった。

 シンガポールの人びとは楽しんでいます。バード・ウォッチャーならぬカワウソ・ウォッチャーが出現し、彼らの姿を記録し、家族構成を調べ、その変化を追って逐一フェイスブックにアップする。一匹ずつのカワウソに名前をつけ、誰がどこに出てきた、何を食べてた誰とけんかしたか、などなど。
 写真だけ見るとみんなおなじ顔、姿で、ぼくらにはカワウソの個体の区別なんてとてもつかないけれど、ウォッチャーはちがう。耳の形や尻尾の形で見分けるんだそうです。

(資料映像)

 最近はカワウソ・ボランティアもいて、彼らが道路を渡るときには横断歩道の信号ボタンを押してやり、車にはねられないように誘導する、なんてこともしているそうです。
 そういうのに、なりたい。
 いや、ボタン押す方じゃなく、押してもらう方。
(2021年10月25日)