キリンビールを飲む

 キリンビールがミャンマーの軍事政権と縁を切るそうです。
 よろこばしいことなので、今夜もまたキリンビールを飲もうと思います。

 15日の朝日新聞によれば、キリンビールは2015年、ミャンマーの軍事政権系の企業と「ミャンマー・ブルワリー」を設立、ビール事業を進めてきました。しかし去年2月、クーデターで軍事政権ができたのを機に撤退を決め、提携を解消すべく交渉を進めてきたそうです。ことし6月をめどに株式をすべて売却するというから、損害覚悟の撤退でしょう。

2月15日朝日新聞記事

 ミャンマーの軍事政権は多くの市民を殺害し、民主主義を破壊しました。いまなお軍政に抗議する市民を弾圧し、山間部でゲリラ戦を戦っている人びとを虐殺しています。そうしたことを考えれば、キリンはもっと早く撤退すべきでした。撤退しないよりずっといいけれど。
 ぼくはIOC、国際オリンピック委員会という汚れた組織を支える日本企業、パナソニック、トヨタ、ブリジストンについてはひどいと思うけれど、今回のキリンのような場合は称賛したいと思います。

ミャンマー軍政への抗議(2009年、ロンドン)
(Credit: totaloutnow, Openverse)

 キリンについては、個人的な記憶もあるのです。
 明晴学園というろう学校を設立しようと資金集めに苦労しているころ、仲間とともに多くの企業を回りました。そのとき、ちゃんと話を聞いて現場に足を運び、ろう児の姿を見た上で援助してくれたのがキリン財団でした。
 企業にしてみれば社会貢献事業の一環でしょうが、ぼくらにしてみればほんとにお金がなくて苦労しているとき、手を差しのべてくれたありがたさは身にしみています。以来、ビールはキリンと決めています。

 もちろんキリンだけでなく、ほかにも多くの企業の支援を受けました。でも担当者の姿を見てわかります。社会貢献事業がその企業の柱なのか、それとも世間体をつくろうだけの「窓際業務」か。キリンは担当者に、現場に足を運ぼうという意欲がありました。なによりも担当者が現場を楽しんでいました。

 そうでない企業もありましたね。
 三井でも三菱でもない、あるメガバンクの社会福祉財団は、担当者が上から目線。その財団からいくつもの福祉団体が寄付を受け、みんなで集合写真を撮るとき、担当者はの前列の中央にすわっていました。現場を知ろうという意欲もなかった。そういうスタッフを社会貢献の窓口においている企業は、本体もどこか歪んでいると思ったものです。もう10年も前の話だから、いまは変わっているかもしれませんが。
(2022年2月15日)