クマに出会ったら

 浦河町でも、クマを見た人はいます。
 でも襲われた人は、少なくとも近年はないようです。
 それでもクマに出会ったらどうするか。死んだふりをするとか木に登るとか、いろんな俗説があります。熊よけスプレーがいいというけれど、あんなもの、いざクマに襲われたら使えるはずがないという人もいました。どれがほんとだかよくわからない。

 そう思っていたら、ニューヨーク・タイムズにじつにわかりやすい「クマ対処法」がまとめられていました。アメリカのケースですが参考になります(How to Survive a Bear Attack. Aug. 27, 2021, The New York Times)。

 驚いたのは、クマよけの鈴はあまり効果がないということ。
 鈴は音が小さいから。それよりホイッスルを吹いたり手を叩いたりした方がいいらしい。
 クマよけスプレー、カラシ成分の入ったものは強力な助っ人です。アメリカではクマに襲われ、クマよけスプレーを使ったケースが83例あって、そのうち81例でクマを撃退できたそうです。逆に銃を使った人は半数がクマに襲われている。銃よりスプレー、なのですね。

 死んだふりは、場合によるらしい。
 クマとのあいだに距離があれば、立って手を上げ、少しでも自分を大きく見せる。そうしているとクマはだいたいは引き下がる。
 それでも襲ってきたらどうするか。
 アメリカには「黒なら戦う、茶なら伏せる」ということわざがあるそうです。ブラックベア(黒クマ)なら全力で戦う、ブラウンベア(茶色クマ、日本のヒグマに近い)なら死んだふりをする、すなわち地面にうつ伏せになり首の後を手でおおって守る。リュックは背負ったまま。

 どんな場合にもやってはいけないのは「あわてて逃げる」ことです。逃げたら、クマは本能的に追いかけて襲ってくるので。

 クマと遭遇する危険性は増しています。それでも世界中で人がクマに襲われる事件は年間40例ほど、北米では10例くらいで、死亡者が年に1人か2人です。これは毒蛇で命を落とす人(年平均5人)や雷の犠牲者(去年27人)より少ないそうです。

 日本でいうなら、山中でクマと出会っても距離があればまず向き合って立つ。相手の出方を見る。近づいてきたら両手を上げるなどして、こちらをできるだけ大きく見せる。さらに向かってきたらあらゆる手段で戦う。相手がヒグマだったら、最後は死んだふり、でしょうか。
(2021年9月13日)