「グローバリゼーション」は、ウクライナ戦争で終わるのか。
ニューヨーク・タイムズが論じています。(Will the Ukraine War Spell the End of Globalization? March 30, 2022, The New York Times)。
1990年代に旧ソビエト連邦が崩壊して以来30年、グローバリゼーション、各国の経済が国境を越えて結びつき膨張してきました。それが限界を迎えたところでコロナ禍が起き、世界経済は混乱しています。ゼロ・コロナを唱える中国が外国とのあいだに高い壁をつくったことは、非グローバル化の象徴的な例となりました。

ウクライナ戦争がこの傾向に拍車をかけています。ロシアへの経済制裁とロシアの孤立化を見て、各国が自給自足の経済に目を向けるようになりました。経済評論家のマット・イグレシアスさんがいっています。
「ロシアへの制裁はきわめて厳しいもので、“非グローバル”への動きとなった。アメリカの“経済的大量破壊兵器”を見て、インドやブラジル、ナイジェリアのような国が自分たちのあり方を見直している」
すでにアメリカは、トランプ政権の時代から中国への過度な依存を脱する方向に向かっています。バイデン大統領も軍備から社会インフラまでの国産を強調するようになりました。
中国も、ロシア、ウクライナへの小麦依存から自給体制の促進をうたっているし、欧州もロシアの化石燃料からの離脱に向かっています。

グローバリゼーションが途上国の低賃金労働に支えられていたとすれば、非グローバル化はさまざまな消費財の価格上昇、インフレーションを招きます。すでに途上国では食料と燃料の高騰が起きている。しかし非グローバル化は悪いことだけでなく、国内産業の競争力強化や雇用の促進にもなりえます。再生可能エネルギーに向かうことで、化石燃料への依存がとくにヨーロッパで減りグリーン化が進む可能性もあるでしょう。

ぼくらがこれから見るのは、経済的、政治的に分断された世界です。しかしかつてのような冷戦時代にもどるということではないし、グローバリゼーションがなくなることでもない。当面はロシアを切り離したところで相互に結びついた各国が、これまで以上に自立自給を意識するということでしょう。
そういう動きが、国を強めるというよりは地域社会をゆたかにする方向にまで向かえないものかと思います。
(2022年3月31日)