コロナはパンデミックから「エンデミック」になる。
変異株のせいで、集団免疫の敷居は70%から80%に上がった。
世界は集団免疫を達成できず、コロナはこの地上から消えることはないだろう。
ニューヨーク・タイムズが示唆に富んだニュースレターを配信しています(Debatable: A future without herd immunity, Opinion By Spencer Bokat-Lindell, May 20, 2021, The New York Times)。
1年前、多くの専門家はコロナはワクチンができれば解決に向かうと考えました。60%から70%の人がコロナに対する免疫力を持てば、感染は収束すると見たのです。この見通しは、いまはもうあやしい。タイムズ紙で医療を専門とするアプールヴァ・マンダヴィリ記者は「集団免疫は近い将来には達成できない、おそらく永久に無理だ」と書いています。

それは、アメリカではワクチンを拒否する人が多いこと、ワクチンを受けようと思ってもその機会に恵まれない人が多いことに加え、新たな変異株(B.1.1.7)が急速に広がり、集団免疫を達成するには人口の80%の接種が必要と見られるようになったためです。
世界的に見ればワクチンの格差は広がる一方です。富める国がどんどんワクチンの接種を進め、貧しい国にはとてもそんな余裕はない。貧しい国で感染がつづくかぎりコロナは変異しつづけ、ワクチンの効かない変異株を生み出すでしょう。それが富める国に還流し、新たな流行につながる。この構図は一部がすでに現実となっています。
日本で感染が増えているのも、変異株の影響と見られます。日本の変異株には既存のワクチンが有効だからいいけれど、それがいつまでつづくかはわかりません。

コロナはもうパンデミックではなく、人間社会に常在する疫病「エンデミック」です。
オリンピックのために日本はワクチンを必死に進めるでしょう。そのためもあって、日本では年内に集団免疫が達成できるかもしれない。でもコロナはいつまた、どこで起きてもおかしくない疫病です。それに対処するには、オリンピックがあろうがなかろうが、変異株に対応できるワクチンを大量に、いつでもどこででもつくり使える体制を整えることです。日本がこの20年怠ってきたことです。
(2021年5月21日)
補足 コロナの変異株B.1.1.7は、欧米ではイギリス型と呼ばれ、イギリスではケント型と呼ばれています。日本のN501Yと呼ばれる変異株とほぼおなじです。名前のちがいは変異株全体をさすか、変異の特定の場所をさすかのちがいです。