コロナは太る

 ステイホームで体重が増える。
 こういう調査結果が出たと、22日のニューヨーク・タイムズが伝えています。情報源はJAMA、権威あるアメリカ医学界雑誌です。そのオンライン版を参照しました(JAMA Network Open. March 22, 2021)。

 結論をいうと、アメリカではステイホームが行われた地域の住民は、平均して「10日間で0.27キロの体重増加」があったということです。1か月ちょっとで1キロになるということですね。

 この調査を行ったのは、カリフォルニア大学のグレゴリー・マーカス教授のグループです。マーカス教授は、体重増加は長期的に見れば平均寿命を縮めるから、コロナ禍といえどもステイホームを実施するときはこうした側面も考慮しなければならないといいます。
 やむをえずステイホームをするときは、食事や運動のくふうも必要になるということですね。

 それだけなら大したニュースではない。
 ぼくが興味を覚えたのは、調査研究の方法と背景です。
 研究したのはカリフォルニア大学の教授だけれど、その対象となったのは全米37州の269人、しかも去年2月1日から6月1日の4か月間に、その人たちの体重測定をなんと7444回も行っている。

 いったいどれだけ金と手間をかけたの? この調査に。
 からくりはかんたん。「スマートスケール」と「スマホ」でした。

 調査に応じたのは、フィットビットやアイヘルス(Fitbit or iHealth)などの企業のスマートスケール、高機能の体重計を使っている人です。上に乗ると、体重だけではなくその変化や体脂肪率まで教えてくれる、そういう体重計ですね。それがブルートゥースでスマホにつながり、スマホ・アプリが「あなたの健康状態」を教えてくれるわけです。

iHealth 社の”スマートスケール”
(同社サイトから)

 マーカス教授がしたのは、こうして測定されたデータを全国からネットで送ってもらうことでした。テキサスにいるおばさんが朝スマートスケールに乗ると、その数字がリアルタイムでサンフランシスコにいる教授のパソコンに立ち上がる、というようなイメージでしょうか。

 アメリカの健康産業は、ネットに乗って想像を超える変化をとげているらしい。いまや自宅でするヨガやフィットネスもネットでつながり、ソーシャルな環境で楽しむ人が増えているとか。
 でもステイホームだとやっぱり体重は増える、という話でした。
(2021年3月23日)