WHOが去年の3月11日、「コロナ・パンデミック」を宣言してからちょうど1年がたちました。
思えば去年のいまごろは、まだのどかだった。
それがいま、地球上はどこもかしこもコロナだらけ。暮らしは変わり息苦しい日々がつづいています。
この1年で世界の感染者は1億2千万人、死亡者は260万人。
日本の死亡者8千人は、まだ少なくてすんだ方だということでしょうか。

この間、多くの国で「社会を守るか、市民の自由を守るか」の議論がつづきました。
社会が優先する国は、中国のように犠牲者が少なくてすんだ。日本もどちらかといえば社会防衛が前面に出た国だったといえるでしょう。
一方、欧米諸国はぼくらよりずっと市民の自由を尊重した。その最たる国アメリカでは、感染が広がって52万人が亡くなっています。イギリスでも12万人あまりの犠牲者が出ている。
社会のあり方の鮮明なちがいでしょう。

ぼくは、たくさんの死者を出した国はまちがった、失敗したと単純にはいえない気がします。
ぼく自身が感じてきたこの1年の重苦しさ、人と会えないむなしさ、失われた人間的な暮らしの大きさを思うなら。たしかにぼくらは生物としてはこの1年を生きながらえた。でも社会人としては半分死んだようなものだったんじゃないだろうか。
人は、人とともに生きる。国や社会のために生きるのではない。その感覚が強かったから、欧米ではアジアをはるかに超える犠牲者が出たのではないか、そんな気がします。

アメリカ・イギリスは大きな被害を被ったけれど、その渦中でワクチンという対抗策を練ってきました。その力が、いまコロナの正面を突破しようとしています。
ニューヨーク・タイムズによれば、3月11日現在のワクチン接種状況は次のようなものです。
イスラエル57%、イギリス34%、アメリカ19%。
イスラエルでは町のカフェが開放され、市民は「ほんとに、ホッとした」と息をついているとか。イギリスでは学校や美容院が再開され、アメリカではワクチンを受けた人が老人ホームを訪問できるようになりました。バイデン大統領は5月までに全国民のワクチンを確保するといっています。
日本のワクチン接種率は0.1%。そもそもワクチンが確保できていない。どうしてこんなに出遅れているんだろう。自由が制限されたままワクチンによる社会防衛もすすまないんじゃ、踏んだり蹴ったりですよね。
(2021年3月12日)