スポーツ界と中国

 読んで、少しスッキリしました。
「スポーツは、まだ中国に頼るのか?」という、24日付ニューヨーク・タイムズの長文の記事です。
 中国の横暴に見て見ぬふりをし、金もうけに専念する国際スポーツ界の動向を、そしてその環境の変化を、アンドルー・ケー記者が伝えています(Do Sports Still Need China? By Andrew Keh. Nov. 24, 2021, The New York Times)。

 この記事は、今月2日、中国で起きたテニスのペンシューアイ(彭帥)選手の「消息不明事件」から、「国際スポーツ界と中国」を論じたものでした。

ペンシューアイ選手
(Credit: JCTennis.com, CC BY-SA 2.0.)

 ペンシューアイ選手は、かつて中国共産党最高指導部にいたチャンカオリー(張高麗)前副首相に性的暴行を受けたとSNSで告発し、その後消息不明になりました。ところが先週以来、中国のメディアなどが、彼女の告発はウソで、彼女は自宅で安全に過ごしているという写真やビデオをあいついで報じています。そのお先棒を、IOC、国際オリンピック委員会までもが担っている。

 IOCだけでなく、アメリカのNBA、プロバスケットボールやサッカーのイングランド・プレミア・リーグ、自動車のF1などのビッグ・スポーツは、中国のチベットやウイグルに対する弾圧や民族虐殺、人権問題に目をつむり、巨大な中国市場での金もうけに専念してきました。

 ところが今回、ペンシューアイ選手の所属するWTA、女子テニス協会だけは、こうした前例にならおうとしません。彼女の告発の公正な調査を求め、それがないかぎり中国でのゲーム開催をやめるという、明白な意向を表明しています。

 WTAの強い態度は、そうせざるをえないほどに、最近の中国に対する西側世界の反発が強まっているということでしょう。また一党独裁の強権政治がますます強まる中国で、人権問題などに目をつぶりつづけることがいかにむずかしいかを示している。専門家のなかには、今回のWTAと中国の正面衝突が、国際スポーツと中国の関係のひとつの分岐点になるという見方があると、ケー記者は指摘しています。

 ジョージア大学のトーマス・ベイカー教授はいいます。
「ビッグ・スポーツは中国での長期的なビジネスに躊躇している、それは確かだ。いまの中国はもう、2008年に(北京オリンピックで)世界を迎え入れた中国ではない」

 それにしても、かわいそうなペンシューアイ選手。
 本人はもとより、家族は、友人は、どうなってしまっただろうか。
 WTA、がんばれ。
(2021年11月25日)