おや、こんなところに。
ヨーロッパの各地に残る少数言語のひとつ、ソルブ語の記事が目に止まりました。BBCのトラベル・サイトです。http://www.bbc.com/travel/story/20210615-sorbs-the-ethnic-minority-inside-germany?referer=https%3A%2F%2Fwww.bbc.com%2Fnews
ヨーロッパの少数言語は、バスク語やアイルランド語など無数にありますが、ぼくはドイツ東部にある少数言語、ソルブ語に少なからぬ興味を持っています。

バウツェンを中心におよそ3万人の話者がいるソルブ語は、1500年ほど前に中央アジアからこの一帯にやって来たスラブ系の人びとの言語です。以来ずっと、彼らはこの地で独自の言語と文化を守ってきました。

こんなに長い間、ひとつの言語と文化がひとつの場所にあったのはそれだけでも驚きです。BBCはこの一帯が地理的に孤立していたからだといいます。森と草原に囲まれ、主要な街道からは外れている。50キロ先にあるドレスデンから来ると、まったくの別世界だとか。
バウツェンのなかでも、クロストヴィッツというところは住民の90%がソルブ人で、議会ではソルブ語が使われ、公文書はドイツ語、ソルブ語両言語でつくられています。

(バウツェン、下がソルブ語)
ドイツ政府はソルブ語とともにロマ語、デーン語など、国内にある4つの少数言語を積極的に保護する政策を進めています。全体主義の国がすぐに同化政策を取り、少数言語と文化を抹殺するのとは正反対の方向ですね。
ぼくはバウツェンに行ったことはないけれど、ソルブ語については上智大学教授の木村護郎クリストフさんにいろいろ教えてもらいました。少数言語ということでは、ぼく自身が関係する日本手話と共通する部分がとても多いからです。
でもそれだけではありません。ソルブ語という言語は歴史の夢をかき立ててくれるのです。

精緻なイースター・エッグで知られる
1500年前に中央アジアからやってきたこの言語は、なぜここに来たのか。中央アジアから東欧へは無数の民族が移動してきたけれど、そのもとは何だったのか。ソルブ語はイディッシュ語とどうつながるのか、つながらないのか。すべては中世中央アジアの強大なユダヤ人国家「ハザール帝国」につながるのかどうか。
なじみのない話ですみません。でもぼくにとってソルブ語はこういう類の幻想をかき立ててくれるのです。
(2021年6月17日)