タルサの虐殺を知るべきだ。
俳優のトム・ハンクスさんが、ニューヨーク・タイムズにこんなテーマで寄稿しています。
「アメリカのお父さん」ともいわれる大俳優が、100年前にオクラホマ州タルサで起きた黒人虐殺事件について真実を知るべきだと訴えたのです(Opinion: You Should Learn the Truth About the Tulsa Race Massacre. By Tom Hanks, June 4, 2021, The New York Times)。

日本でいえば、森繁久彌が朝日新聞に寄稿して「朝鮮人虐殺について知るべきだ」と訴えたようなものでしょうか。ちょっと例えがズレてるかな。
これは1921年、オクラホマ州タルサで起きたアメリカ最悪の人種暴動、虐殺事件です。人種差別に抗議した黒人に対し、武装した白人集団が彼らを襲って多くの人を虐殺し、町全体を焼き払いました。300人が殺され、1万人が焼け出され、タルサの黒人コミュニティは壊滅的な打撃を受けました。
ことしはそれから百年目にあたります。

この大事件について、トム・ハンクスさんはいっています。
・・・小学校から大学まで、アメリカの歴史を学んだ。奴隷制や構造的な差別、マーチン・ルーサー・キングについても学んでいる。でもタルサはどの教科書にも載っていなかった。歴史の教科書は白人が書いたものだからだ。去年ニューヨーク・タイムズを読み、はじめてタルサの虐殺を知った・・・

事件の記念碑
もちろん黒人が人間として扱われず、虐殺されつづけたことは知っている。でももしタルサの大規模な虐殺を学んでいたら、全体像をずっとよく理解できたろうとハンクスさんはいいます。最近はようやく、白人だけの視点に立つのではなく「歴史全体」を伝えるテレビ番組やドキュメンタリーが出てくるようになりました。

・・・これからは学校でもタルサの真実について教えるべきか? もちろんだ。そんなことを教えたら子どもたちは不愉快だろうといって避け、きれいごとですますべきではない。歴史は複雑なものであり、それを学ぶことで私たちは賢さと強さを身につけることができるのだから・・・
とてもまともな、まっすぐな寄稿です。
子どもたちにとってこころが痛むことでも、不愉快なことでも、教えたほうがいい。
アカデミー賞に何度も輝いた大スターでも、社会と歴史に目を向けている。日本でもこういう動きがもっと出てくればと思います。
(2021年6月18日)