ドイツ復活へ

 ドイツがコロナから復活してきました。
 G7主要国で先頭を走るイギリス、アメリカについでドイツはいま3番手、しかも加速しています。1年前にはヨーロッパの優等生だったのが、感染の封じこめに失敗して一時はイタリア、フランスなみに悪化していました。しかしワクチンの接種で4月21日以降、感染者は着実に減りつづけています。

 全国民の30%以上が接種を済ませ、ドイツの保健相はコロナの「第3波は乗り越えた」といっています(Germany Is Seeing Virus Cases Go Down and Vaccinations Go Up. May 7, 2021, The New York Times)。

ドイツのメルケル首相

 とはいえ、これまで遅れを取ったのはワクチン行政が迷走したからでした。
 イギリスは自国で開発が進んだアストラゼネカ製のワクチンを去年12月から接種し、早い段階で集団免疫を達成しました。
 一方ドイツはアストラゼネカ・ワクチンの副反応を重視し、使用を制限した結果、感染の広がりをおさえきれず多くの犠牲者を出してしまった。方針を変更してアストラゼネカのワクチンも積極的に活用するようになり、ようやく「第3波を乗り越えた」といえるようになりました。

 ワクチンや感染症の専門家がずっと主張してきたのは、「ワクチンには副反応がある。けれど利益の方がはるかに大きい」ということです。
 わかりやすく言い換えれば、「100万人にワクチンを打てば1人死亡するおそれはある。けれど数千人のいのちが助かる」ということです。

 人のいのちを数字で比較すべきではない。けれどワクチンの安全や倫理をめぐって厳密な議論を進めたドイツは、結果として多くの犠牲者を出してしまった。それが、副反応があってもいいからアストラゼネカ・ワクチンをと、やむを得ず進路変更になったのでしょう。
 もっとも、イギリスから見ればドイツは厳密な議論を進めたというより、たんに現実を見ようとしなかったということになるのかもしれません。

 政府の方針変更で、多くの人がアストラゼネカを接種するようになりました。でもイギリスのワクチンなんか打たないという人もいるそうです。ファイザー社のワクチンがいいといって。ファイザーはドイツの企業、ビオンテック社と連携しているし。そういう人はいっているそうです。
「ファイザーは、ワクチンのベンツなんだ」
(2021年5月8日)