ニュージーランド転進

 ついにニュージーランドが「ゼロ・コロナ」をあきらめました。
 厳しいロックダウンをこれ以上つづけることはできないと、感染の広がりを容認する姿勢に転じたのです。
 オーストラリアにつづきニュージーランドも「ウィズ・コロナ」。
 これでゼロ・コロナを掲げる国は、中国だけになりました。中国のようになりたい国はどこにもないので、いまやコロナは「共存」が世界標準です(Battling Delta, New Zealand Abandons Its Zero-Covid Ambitions. Oct. 4, 2021, The New York Times)。

 ニュージーランドはコロナがはじまってすぐ、厳しいロックダウンでゼロ・コロナを達成しました。去年コロナ禍がはじまってからことし春までほとんどの期間、オーストラリアとともにノーマスク、ノーディスタンスで我が世の春を謳歌したのです。アーダーン首相のリーダーシップと、先住民マオリの伝統的な価値観が要因だったと、このブログでも紹介しています(3月13日)。

ニュージーランド
アーダーン首相

 しかしこの夏、首都オークランドで感染がみつかり、2か月近く厳しいロックダウンを行ったにもかかわらず、コロナをなくすことができませんでした。アーダーン首相はいっています。
「私たちは方針を変えざるをえない。デルタ変異株の出現で、長期にわたる厳しい規制でもゼロ・コロナを達成することは困難になった」

 去年とちがって、ことしは規制措置に国民の反発が強まりました。多くの市民は、去年はロックダウンやむなしと思ったけれど、ことしはこれ以上耐えられないと抗議デモまで起こしている。専門家は感染をなくすにはさらに2か月のロックダウンが必要といったけれど、それは政治的に無理だとアーダーン首相は判断したようです。

オークランド

 ゼロ・コロナがつづいたニュージーランドは、ワクチンの接種が遅れました。接種を終えたのは全国民の48%、これで規制を緩めるのはギャンブルです。ある程度の規制を残しながら、感染爆発を恐れつつウィズ・コロナに移行することになります。

 結局ニュージーランドもコロナは克服できなかった。
 そういう見方もできるけれど、先進国のなかではもっとも成功を収めた国といえるでしょうか。感染が少なかったし犠牲者も少なかった。なにより、欧米が1年半にわたってロックダウン、規制に次ぐ規制で不自由な暮らしを強いられているとき、ニュージーランドのほとんどの人びとはほとんどの期間、コロナ以前の日々を享受できたのです。

 それは島国だったから、小さな国だったからというのはかんたんです。それより、この国ではなぜ政治がまっとうに機能していたかを考えたいところです。
(2021年10月8日)