ハードにはハードで

 アメリカ議会に台湾侵攻防止法が提出されていることを、きのうのブログで書きました。法案はまだ可決の見通しが立っていないようです。
 とはいえアメリカ議会は、バイデン政権とちがって中国との対決姿勢を明確にしています。
 それを評価する社説を、ワシントン・ポストが掲載しました(The Post’s View: How the U.S. government can deter China’s threat in Taiwan. Oct. 11, 2021, The Washington Post)。

 社説の概要は以下のようなものです。
 10月になって中国軍機がかつてない頻度で台湾の防空圏に侵入している。中国の意図が何であれ、問題は台湾を侵攻させないための軍事的な抑止力をどうつくるかだ。
 バイデン政権の最大の戦略的課題は、中国の台湾侵攻を止めることになった。
 台湾は近年、防衛費をGDPの2%以下にまで削減していたが、対艦ミサイル増強のために90億ドル(約1兆円)の追加予算をとるなど、遅きに失したとはいえ思い切った策をとりはじめている。

 バイデン政権もまた、原子力潜水艦の技術ををオーストラリアに供給し、日本やインドとの連携を強め、EUとともに台湾のWHO加盟を働きかけたりしている。また7億5千万ドル相当の軍事装備を台湾に売却し、米海兵隊による台湾軍の訓練もつづいている。
 にもかかわらず、アメリカ軍は中国の侵略に対し十分反撃できる力を持てていない。同盟国との連携を考慮に入れても状況は変わらない。アメリカは今後、軍事力、ことに海軍力の増強に相当な投資をしなければならない・・・

 ポスト紙の社説はこういいながら、アメリカ議会が軍事費を増やしたことを評価しています。
 その議会は、中国政策にかんするかぎり明らかに前のめりで、バイデン政権の慎重な姿勢に対して、議員たちは超党派で「中国に対抗しなければならない」と軍事費を積み増しています。

 アメリカの軍事費はおよそ80兆円、下院はそれに3兆円も積み増し、海軍力の増強を求めているとか。ほかはともかく、対中国では予算を惜しまないということでしょう。
 ここから見えてくるのは、台湾問題で腹のさぐりあいは意味がない、力には力を、中国に対してはハードウェアとしての軍事力を増強するしかない、という議員たち多数派の潮流です。
 言い方を変えるなら、中国の最大の敵はアメリカ議会になった。

 そうした議会の動きを、ポスト紙は淡々と支持しているかのようです。
 チベットやウイグル、香港で何が起きたかを思えば、そうなるのも致し方ないというかのように。
(2021年10月13日)