いまやヴィーガン食はどんどん広がっているけれど、卵だけは代用品をつくるのがむずかしい。
ヴィーガン食研究家、ザリア・ゴーベットさんの「ヴィーガン卵レポート」はなかなか興味深い読み物でした(The race to make a multipurpose vegan egg. By Zaria Gorvett. 21st January 2022, BBC)。
徹底した菜食主義者のヴィーガンは、卵を食べません。でも卵はオムレツになったり目玉焼きになったり、パンやケーキ、クッキー、マヨネーズなど多くの加工食品の原料です。これをぜんぶやめることはむずかしい。だからヴィーガンは涙ぐましい努力を重ね、卵の代用品をつくってきました。

たとえば2013年、イギリスでかなり本物に近い「固茹で卵」ができました。
豆乳と寒天で白身をつくり、マッシュポテトでつくった黄身に香料で着色剤ともなるターメリックをつかったそうです。
ついで評判になったのはオーストラリア人がつくった目玉焼き。これは小麦粉と水をお好み焼きのようにフライパンに延ばし、白身にします。その上にマッシュしたカボチャを落とす。半熟の黄身が乗った目玉焼きになるんだそうです。

(Credit: jaundicedferret, Openverse)
みんなが驚いたのは、別のオーストラリア人シェフが発明したポーチドエッグ、落とし卵でした。これは海藻から取り出したエキスを丸くして湯のなかに落とします。そのまわりを豆腐でつくった白身で囲うという、高度な調理技術が使われました。でもこのヴィーガン・ポーチドエッグ、ナイフで切り分けると、とろりと出てくる黄身は本物としか見えないそうです。
2014年の大発見は、ヒヨコ豆の汁でした。アメリカのエンジニアが偶然、ヒヨコ豆の缶詰の残り汁が卵の代用になると気づいたのです。タンパクが豊富なヒヨコ豆の残り汁は、ホイップするとメレンゲになるしマヨネーズもつくれる。これは瞬く間に世界中に広がりました。

というふうに、ヴィーガンたちは多彩な代用品を開発しています。
にもかかわらず、すべての目的に使える卵の代用品はできていません。いくつものベンチャー企業が挑戦しているけれど、まだしばらく先のことになるでしょう。
専門家がいっているそうです。いまの代用品は、肉にしろ卵にしろ、天然のものをまねするだけの第一世代だが、やがてそうではない、まったく新しいヴィーガン食品が第二世代として登場するだろうと。
ヒヨコ豆の汁が卵の代用ではなく、卵がヒヨコ豆の代用品になる、そういう日が来るのかもしれません。
(2022年2月5日)