フェイクでないもの

 大ニュースが起きるとネット上にフェイクニュースがあふれます。
 むかしからぼくは、そういうときにはアメリカ、イギリスのメディアに頼ります。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、BBCが軸です。なぜならそこにいちばん「ナマの情報」「一次情報」があるから。もちろんすべてが真実ではないけれど、読み方をわきまえていればそんなにまちがえない。

 きょうはワシントン・ポストを読んで、なるほどなと思いました。
 ウクライナ戦争は、ロシア軍による電撃の侵攻が2日目になり、首都キエフ周辺で勢いが鈍っている。日本時間26日午前7時過ぎのポスト紙の情報は以下のようなものでした。

「米国防総省高官によれば、ロシア軍に最初の勢いはない。劣勢のウクライナ軍が抵抗している。ロシア軍は動員された兵力の3分の1の5万人がウクライナ領内に入ったが、国防総省高官は「ロシアはわれわれが予測したほどには侵攻できていない」といっている」

 強大なロシア軍に、勝てる見込みのないウクライナ軍が首都近郊で抵抗している。とはいえその後の情報では、これが長期間持ちこたえるとは思えない。いずれロシア軍はキエフを占領し、かいらい政権を樹立するでしょう。しかし「2日目の抵抗」は、今後何が起きるかを予測させる。正規軍は消滅しても、ウクライナ人は長いゲリラ戦をつづけるのではないか。それにロシアがどれだけ耐えるだろうか。
 ポスト紙情報を読んで、ぼくはそんなことを考えました。ウクライナは、戦争なしでロシアの属国になった隣国ベラルーシとはちがうと。

キエフ

 だからでしょう、プーチン大統領は「ウクライナ軍、決起せよ、クーデターを起こせ」と呼びかけている。でもウクライナはそんなやわな国ではない。いったん根づいた民主主義が容易にくつがえることはない、と思うのは楽観にすぎるでしょうか。

 ワシントン・ポストはウクライナに7人の現地記者、カメラマンを展開しています。東部の都市ハリコフに取材拠点を置き、ポーランドに近い都市リヴィウから出稿している。こんな大がかりな取材体制は10年前の「アラブの春」以来だとか。名前から推定するに、スタッフの半数が女性やアジア系、スラブ系のようです。

 以前ポスト紙の編集者がいっていたことがあります。
 ニューヨーク・タイムズは陸軍みたいなもの、われわれは特殊部隊だと。いまは陸軍はもちろんだけれど、特殊部隊の働きからも目が離せません。
(2022年2月26日)