マグニツキー法

 ようやく日本でも、マグニツキー法を制定しようという動きが出てきました。
 中国のウイグル問題に対抗するために。

 マグニツキー法というのは、ひどい人権侵害や虐殺を行う国に対し、経済制裁や資産凍結などができるようにする法律です。2012年、オバマ政権のもとで成立したこの法律をアメリカは実際にウイグル問題で適用している。法律の名前は、ロシアの不正を告発して獄死した弁護士、セルゲイ・マグニツキーから来ています。

 アメリカだけでなく、EUや主だった先進国にはみなマグニツキー法がある。じゃあ日本にもそういう法律をつくろうという動きが超党派で進んでいるとか(朝日新聞、2月7日)。
 ところが相手が中国とあって、日本政府が動き出す気配はない。無視してやり過ごそうとしているかのようです。

 以前だったら、まあそんなもんだろうと、ぼくもそれほど関心は持たなかった。
 でもいまは、やっぱりひどい、黙っていられないと思う。ミャンマーも香港もひどいけれど、ウイグルはレベルがちがう。
 最初にそう思ったのは、去年10月のカナダ議会報告書を読んだときです。

ウイグル自治区、トゥユク村 (iStock)

 ウイグルで、中国は「集団隔離、強制労働、常時監視、不妊手術などによってウイグル人の文化と宗教を根絶しようとしている」とあります(カナダ議会外交委員会小委員会声明、October 21, 2020)。ぼくは中国がウイグルで、不妊手術なんて恐ろしいことまで強行しているとは知りませんでした。

 不妊手術だけではない。性的暴行や強制的な中絶、生まれた子どもを親から引き離すことまで進めている。そういう証言をBBCが伝えています(Uighurs: ‘Credible case’ China carrying out genocide. By James Landale, BBC Feb.8, 2021)。これはもう、ウイグル民族全体の抹殺をねらっているとしか思えない。あの中国が。全力で。

 いまの日本がマグニツキー法をつくることはほとんど期待できない。つくっても、どこまで運用できるかわからない。でも法律をつくろうと考えた自民党の中谷元さんや、国民民主党の山尾志桜里さんには声援を送ります。少なくとも、日本にも立法化をめざす議員がいたことは覚えておきたい。

 ひとつ、付け加えておきましょう。

カナダ議会(オタワ, Pixabay)

 カナダ議会の報告書は明確に述べている。ウイグルに関するカナダ議会の非難は、中国政府と中国共産党に向けたものであり、中国国民に向けたものではないと。
 そこは、ぼくもまちがえないようにしたいところです。

補注: タイトルの上にある写真は、ウイグルの前身、いまはない「東トルキスタン共和国」の国旗です。
(2021年2月8日)