マックにもベジ

 ついにマクドナルドが人工肉のハンバーガーを出しました。
「マックプラント・バーガー」っていうんだそうです。まだアメリカでの試験販売で日本のマックにはないけれど、人工肉は確実にぼくらのまわりに押し寄せています (Is the Burger Nearing Extinction? By Frank Bruni, March 6, 2021, The New York Times) 。
 バーガーキングやダンキンには遅れをとったけれど、マックもベジタリアンを無視できなくなったのでしょう。

 タイムズの記事でへえ、と思ったのは、人工肉への流れは動物愛護というより温暖化対策だということ。牛や豚を育成してその肉を食べるより、大豆を加工して人工肉をつくったほうがはるかに二酸化炭素の排出は少ない。その意識が人工肉に向かっているというわけです。

 さらにへえ、だったのが、人工肉はいまや大豆タンパクだけではないし、また肉の代用品だけでもないということでした。人工タンパクをつくることで、チーズやクリームなど乳製品の代用品までつくっている。しかもその作り方に技術革新の波が押し寄せ、まるでゴールド・ラッシュだとか。

 いまもっとも注目されているのは、微生物を使ってタンパクをつくる方法です。これまでの大豆などを加工する方法ではなく、また牛の細胞を人工的に増殖するような方法でもない。

ネイチャーズ・ファインド社ウェブサイトより

 たとえばアメリカのネイチャーズ・ファインド社の場合、イエローストーン国立公園で見つけたフラヴォラピスという真菌、カビを培養し、発酵技術でタンパク質をつくる。そのタンパクをさまざまに加工して「肉」や「乳製品」にするのだそうです。

発酵でできたタンパク
(ネイチャーズ・ファインド社サイトから)

 試食したタイムズのコラムニスト、ブルーニさんは、クリームチーズはまあまあだけど、ミートボール、ソーセージ、チョコレートムースは十分に風味もあって「感心した」といいます。もう差がない、ってことなんですね。だから、牛肉のハンバーガーがなくなることはないけれど、こういう製品はどんどん出てくるだろうといいます。

 人工肉というと、これまでぼくはよく精進料理を思い浮かべていました。湯葉をたくみに調理し、まるで鶏肉の味を出すあの技術にはほとほと感心したものです。「がんもどき」をつくりだした先人の知恵と執念もすばらしい。でも、もうそういうのどかな時代は去ったのかもしれません。ちょっとさびしいけど。
(2021年3月8日)