マナーキタンガ

 マオリのココロで疫病退散。
 そうかあ、これがニュージーランドの秘密だったんだ。
 ワシントン・ポスト紙のオピニオン欄に納得です (The indigenous custom behind New Zealand’s strong covid-19 response, Opinion by Matthew Milner and Richard Ngata, March 11, 2021, The Washington Post)。

 ニュージーランドはオーストラリアとともに、コロナ禍をみごとに乗りきった世界の優等生。日本で8千人も死んでいるというのに、ニュージーランドの死者は26人。
 それだけじゃない。感染者がいないから国内はどんな密もオーケー。ノーマスク、ノー・ディスタンス。ライブ会場では若者がもみくちゃになって踊っている。まるでこの地球上の国じゃないみたい。

ジャシンダ・アーダーン首相
(Facebookより)

 ぼくはそれを、ジャシンダ・アーダーン首相というすばらしい指導者がいるせいだと思っていました。日本よりずっときびしいロックダウンを去年3月から6週間も維持できたのは、彼女が国民に訴えることばを持っていたからでした。たいへんだけど「500万国民がひとつのチーム」、乗り切ろうという彼女の訴えに国民は納得して従った。
 そしてコロナ・フリーの国になった。

 その背景にはニュージーランドの先住民、マオリの文化があったと、ポスト紙に寄稿したリチャード・ヌガタさんたちはいっています。

マオリ民族旗 (iStock)

 マオリの文化は、「マナ」を大事にします。マナとはマオリ語で生きとし生けるすべてのもののなかにあるこころ、霊とでもいうべきもの。一人ひとりのなかにあるマナは、他人を思いやることで強くなる。みんなのマナが強くなれば、自分のマナはもっと強くなる、そんな世界観を「マナーキタンガ」というのだそうです。
 きびしい自然を生きた人びとから受けつがれた知恵でしょう。

 先住民を大事にするニュージーランドでは、長年にわたってマナーキタンガが学校で教えられてきました。それが広く社会に浸透していたことで、ニュージーランドは対立を超え、コロナを乗りきったのだとマオリ民族のヌガタさんたちはいいます。

(Pixabay)

 先住民とその文化が大事にされる社会は、誰もが大事にされる社会でしょう。ニュージーランドの人びとがマナーキタンガを唱えるのは、マオリの知恵を呼び起こしながら、自分たちがどういう社会をつくるかの思いをそこに込めているからだろうと思います。
(2021年3月13日)