差別か、社会防衛か。
イスラエルで「ワクチン後」をめぐる論争がはじまっています。
ワクチンを接種した人だけがコンサートやレストランに入れる。そうでない人は入れない。いいの? それで、と。
はやくも「ワクチン階級」(vaccine class) ということばをニューヨーク・タイムズが使っています(Feb. 18, 2021, The New York Times)。

ワクチンで先頭を走るイスラエルは、数日中に全国民の半数、つまり希望する人のかなりの部分が接種をすませるでしょう。
ナタニエフ首相は21日からショッピングモールや博物館、スポーツジム、ホテルなどを再開すると決めました。2週間後にはレストランやイベントも再開です。
でも、そこに行けるのはワクチン階級だけ。ワクチンの2度接種をすませたか、コロナにかかって回復した証明のある人にかぎられます。そうでない人は依然としてステイホーム。
ワクチン接種の証明は、QRコードのついた「グリーン・バッジ」になるとか。
ユリ・エデルスタイン保健相は、ワクチンを受けない人はこの社会で「置いてけぼりになる」といったそうです。

地方でも、政府に呼応した動きがはじまりました。
ショッピングモールのなかには、先週からワクチン接種者を受け入れたところがあります。従業員がワクチン接種を済ませたら企業の再開を認可するとか、接種していない場合は教師の登校を禁止する、ホテル従業員を停職にするなどの動きも出ています。
一方、そういったことは違法だと警察がやめさせたケースもあり、一部では混乱も起きているらしい。
こうしたことはいずれ、どの国でも起きるでしょう。

ハイファ大学のマヤ・ペレド・ラズ博士は、個人の自由が一定程度制限されるのはやむをえないといいます。ワクチンをしない人を働かせたら企業の安全が守れないというような場合。
「一人ひとりが自分で決めることです。ワクチンを受ければ、なかに入れる。受けなければ、他人に危険を及ぼすことになる」
イスラエルでは、一部ユダヤ教徒が接種を拒否したり、パレスチナ人がワクチンから取り残されているなど、まだまだコロナが猛威をふるう余地が残っています。ワクチン階級といえども当分はマスクやソーシャル・ディスタンスが欠かせない。
ワクチンがあればもとの暮らしにもどれるというわけではないのです。
(2021年2月19日)