ヴィーガン、積極的な菜食主義者は旅行ができませんでした。
旅先では菜食、ヴィーガン食にありつけなかったからです。ところがいまはメキシコのホテルだろうがギリシャのリゾートだろうが、ただの野菜サラダじゃなくてちゃんとしたヴィーガン食にありつけるようになりました。時代は変わったのです(Vegan Travel: It’s Not Fringe Anymore. Jan. 21, 2022, The New York Times)。

ヴィーガンは、肉や卵、チーズやバターも避ける完全菜食主義。またそれほど厳格ではないけれど、肉は食べないベジタリアン、肉を食べるけれど減らしているフレキシタリアンなど、“ベジな人たち”はますます増えています。むかしは健康志向、いまは地球温暖化への懸念から。
アメリカには970万人のヴィーガンがいて、15年間で30倍に増えたという調査があります。別の調査では、62%の人が環境への配慮から肉の量を減らしたいと思っている。いずれにしろ、肉離れの機運は高まっています。大豆などを使った肉の代替製品は、2020年の投資額が3千億円を超えました。

当然、旅行産業、ホテル業界も敏感に反応しています。たとえばこんなふうに。
マリオット系ビジネス・ホテルが朝食バイキングにベジタリアンコーナーを追加。
超高級のペニンシュラ・ホテルが3月から菜食メニューを開始。
メキシコのリゾート・ホテルがVB(ヴィーガン・バー)を開設。フォーシーズンズ・ホテルはヴィーガン専門のシェフを雇用、200以上のヴィーガン・メニューをはじめる。ギリシャの高級ホテルはヴィーガン食しか出さないダイニングを新設した、などなど。

飲食だけではありません。ヴィーガン仕様の部屋もできました。
アラブ首長国連邦のホテルでは「ヴィーガン・ルーム」が選べるようになった。
ロンドンのヒルトン・ホテルの「ヴィーガン・スイート」は、ソファーの革までもが植物材料でできている。
「ヴィーガン結婚式」のできるホテルも現れました。
旅行社のスタッフがいいます。
「食事だけじゃなく、滞在のすべてがヴィーガン。そういうご旅行のお手伝いをします」
こういう最先端の多くは高級ホテルです。結局は富裕層の自己満足と見ることもできるでしょう。でもその陰に、これまでの自分たちの暮らしが気候変動をまねいたのかという後ろめたさがあるなら、悪いことじゃないという気もします。その気持をもっと広げましょうということで。
(2022年1月24日)