バルト海の小国リトアニアが、巨大な中国と戦っています。
中国製のスマホは、ユーザーを監視する機能を内蔵している、危ないから使うなとリトアニア政府が国民に勧告したからです。
中国側は否定していますが、真相はいかに?
このニュース、最初に伝えたのは9月22日のBBCでした(Lithuania urges people to throw away Chinese phones. BBC)。
つづいて9月30日、ニューヨーク・タイムズがフォローしています(Lithuania vs. China: A Baltic Minnow Defies a Rising Superpower. The New York Times)。

発端となったのはリトアニア国防省の次のような国民への勧告でした。
「中国の新しいスマホは買わないように、すでに買った人には可能なかぎり早期に破棄するように」
BBCなどによれば、対象となったのは日本でも売られている中国製スマホ「シャオミ Xiaomi」と、「ファーウェイ Huawei」の一部モデルです。
シャオミには、ユーザーが「チベット解放」や「台湾独立」、「民主化」のような特定のキーワードを使うと、検知して外部に送信できるソフトが組み込まれています。キーワードの数は449にものぼるとか。またユーザーがスマホを使った記録は暗号化され、シンガポールにあるサーバーに送信されるしくみもあるようです。

(同社サイトから)
報道に対してシャオミの担当者はユーザーの監視など行っていないといい、ファーウェイも自分たちは法に従っているといっています。
対立の背景には、リトアニア市民が香港民主派を支持し、リトアニア政府が台湾との関係を深めたことに中国が猛反発している事情があるようです。中国の怒りに対し、リトアニアは外相が「われわれは民主的な動きを進める人びとを支持する」といって引きさがろうとしない。
さらにその背景には、リトアニアが旧ソ連の支配から独立を果たした国であるという歴史的な経緯があります。民主化を進める人びとというのは、自分たち自身のことでもあるのです。

こんな遠い国のニュースにぼくが注目するのは、これが“中国ニュース”のひとつのパターンではないかとも思うからです。中国が怒ろうが金の力で圧倒しようが、臆さずものをいう。それがBBCのようにヨーロッパではじまり、ニューヨーク・タイムズのようにアメリカに伝わる。市民が、外交が動く。
このパターンは、これまでにも中国のチベット弾圧で、ウイグルの民族虐殺をめぐる報道とその後の展開でくり返されてきたことではなかったでしょうか。
(2021年10月1日)