世界の英雄ゼレンスキー、つまはじき者のプーチン。
戦争がはじまって4日たち、こんなことばが聞かれるようになりました。
ウクライナのゼレンスキー大統領が抜群の指導力で評価を高める一方、身勝手な戦争を起こしたロシアのプーチン大統領への嫌悪感が強まっているという図式です(Zelensky: The comedian president who is rising to the moment. Feb. 27, 2022, BBC)。

(本人のフェイスブックから)
ロシアの侵攻がはじまった日、ゼレンスキー大統領は国民に呼びかけました。
私はプーチン大統領に、戦争を避けようと呼びかけた。われわれは冷戦も熱戦もハイブリッド戦争も、どんな形の戦争も求めない。しかし攻撃されれば防衛する。
「もし攻撃してきたら、あなた方は私たちの顔を見るだろう。背中ではなく顔を」
ことばの使い方を知っている政治家です。
その直後、ロシア軍の攻撃がはじまりました。
「自分はロシアの第一の標的だ」というゼレンスキー大統領は、ロシア軍が首都キエフに迫っても逃げようとしなかった。キエフの真ん中でビデオを自撮りし、ネットにアップしている。私はここにいる、逃げない。そして前線を回り、兵士たちを激励する。
亡命政権を樹立するなら逃亡を助けるとアメリカが申し出たのに、それも断りました。
そういう姿がウクライナ国民をひとつにまとめ、祖国防衛へと向かわせています。

ウクライナのニュース・ウェブサイトの編集者、ユリア・マクガフィさんはいいます。
3年前に彼が大統領に当選したときには驚いた。大統領なんてとても務まらないと思ったから。でもこの数週間で見方が変わった。
「全面的な支持と尊敬。ロシアが攻撃してからウクライナ人はみんなゼレンスキーのもとに集まっている。彼はかなめ、プーチンの軍隊に反撃しようと政府をまとめている。こころから彼をたたえるし尊敬しています」
政治に関心がない多くの市民がゼレンスキー大統領のことばを聞き、動き出しています。

3年前、大統領に当選するまではテレビのコメディアンでした。お笑い芸人が冗談半分で政治家になったと笑われたものです。それがウクライナ存亡の危機に際し、国をひとつにまとめ、国民を励まし、先頭に立っている。あるいはそういうイメージがまぎれもなく国民に伝わっている。そのイメージが、ロシア軍に対する全ウクライナの激しい抵抗に結びついています。
尊厳と決意と雄弁。
もっとも必要とされる戦時指導者の登場、と欧米のメディアは報じています。
(2022年2月28日)