人口減の中国へ

 中国の出生率が5年つづきで減少しました。
 去年の出生数は1060万人、死亡者は1010万人です。このままではことし、史上初の人口減となるでしょう。高齢化とともに、中国は歴史的な社会変動に直面します(China’s Births Hit Historic Low, a Political Problem for Beijing. Jan. 17, 2022, The New York Times)。

 1980年以来「一人っ子政策」を取ってきた中国は、出生率の低下で2016年、規制を緩めて「子どもは2人まで」としました。規制を緩めたというより、2人産みなさいと誘導したようなものです。それでも出生率の低下傾向は止まらず、去年は「3人まで」にした。若者世代が子どもを持てるよう、育児、就職、教育などさまざまな面で優遇措置を講じています。それでも少子化の傾向は止まりませんでした。
 要するに中国の女性が、中国指導部の予想を超えて子どもを産まなくなったのです。
 これは韓国も日本もおなじですね。

上海市南京路(2021年2月, iStock)

 アメリカの中国研究者は、ことし、中国の人口は減少するだろうと見ています。北京で働く28歳の女性はいいます。
「子どもはきらいじゃない。でも子どもを育てようという気はしないし、子どものために自分のお金を使おうとは思わないんです」
 こうした考え方の背景にある一因は、教育費の高騰です。教育が成功への鍵である社会で、学校や塾の費用は増すばかり、これが子どもを持とうとしない理由のひとつになっている。最近では塾が規制されるまでになった。
 もちろん理由はそれだけではなく、女性が結婚して子どもを育てる上での社会的な制約は複雑にからみあっています。

 シンガポール大学のゼン・ムー准教授はいいます。
「未婚の女性が結婚しようとしなくなっている。結婚すればますます選択の余地がなくなるから」

 中国社会にとってはたいへんなことだろうし、日本にとっても他人事ではありません。でもこのニュースに、ぼくはなんだか救われる思いもあります。中国でも日本でも、若い世代の女性はおなじなんだなと。少なくとも、自分の生き方を生きたいと思っている人たちがいる。あるいは、そうせざるをえない人たち。
 中国共産党と指導部の人権抑圧にぼくは大いなる反感を覚えるけれど、市井の人びとは別だと思いたい。こういう「おなじところ」をつなぎ合わせてゆけば、ぼくらはもう少しましな社会を、ましな関係をそれぞれにつくることができるんじゃないか。そんなことを思います。
 中国でも日本でも韓国でも。
(2022年1月19日)