人口爆発は終わる

 人口爆発は過去の話。
 世界の人口はやがて減少に転じる。
 女性の教育が進むから。

 1年ほど前、こんな記事を朝日新聞の書評欄で見た覚えがあります(記事を探したけれど、簡易検索では見つかりませんでした)。
 なるほど、女性の教育が進むと人口が減るんだ。
 そりゃそうでしょう、教育でこの社会のしくみを知れば、自分について、歴史について知れば、ただただたくさん子どもを生んで苦労して育てたりしない。
 そんなことを考えていたら、このテーマの特集記事がニューヨーク・タイムズに載りました(How the Coming Population Bust Will Transform the World. May 22, 2021, The New York Times)。

 先月、たまたまアメリカと中国の人口動態調査が発表されたのがきっかけです。じつに興味深いことに、両国ともに人口は増えているけれど、増加の速度がこれまでになく落ちている。つまりこの傾向がつづけば、アメリカも中国もいずれ人口は減少に向かうことになります。
 そんなの一時的な現象だろうという気がするけれど、人口学者はそうは思わない。

 たしかに、日本だけでなく先進国はどこも少子高齢化、急激な人口減少と地方の過疎化が進んでいます。タイムズの記事はいいます。
「イタリアでは産科病棟が閉鎖され、中国北西部ではゴーストタウンが出現している。韓国の大学は新入生が足りず、ドイツでは空き家を取り壊して公園にしている。出生より死亡が多い現象が各地に出現し、加速している」
 専門家は「おそくとも今世紀半ばまでには、歴史上はじめて地球上の人口が減りだす」と予測しています。

 原因は女性の学歴の向上、子育ての負担増などあれこれあるけれど、要するに女性が子どもをたくさん産まなくなったから。そして彼女らにもっと子どもを産ませようとする政策は、ほとんどの国で失敗しています。それは女性の地位向上という意味で悪いことではない、人口問題には「到達すべき目的地はないのだから」という専門家のコメントを、タイムズの記事は伝えています。

 とはいえ、世界人口はいったん減りだせば指数関数的に減ってゆく。今世紀半ば、つまり30年後、ぼくらの子や孫はどんな世界を見るのでしょうか。
(2021年5月25日)