人工肉に切り替えよう

 肉食を減らそう。菜食主義にならなくてもいいから。

 いまや肉食を減らすのは、健康志向やライフスタイルの選択ではなく、待ったなしの地球温暖化対策です。ニューヨーク・タイムズに載ったコラムニストのエズラ・クラインさんの意見をはじめ、いくつかの記事からそう思うようになりました(Let’s Launch a Moonshot for Meatless Meat. By Ezra Klein, April 24, 2021, The New York Times)。

 風力や太陽光の発電を進めるように、プラスチックの削減を進めるように、食肉の削減を進めなければならない。いまのまま食肉生産をつづけたら、地球温暖化は止めることができないとクラインさんはいいます。

 過去60年で世界人口は2.5倍増えたけれど、食肉消費量は4倍に増えました。
 その食肉は過剰な「浪費」によって生産される。世界中の農地の75%が家畜生産に使われているのに、そこから供給されるタンパク質は世界中の人が必要とする量の37%にすぎない。カロリーにいたっては18%です。
 家畜が排出するメタンガスをはじめ、食肉産業はいまや地球温暖化を進める主要な産業となっています。国連環境計画のインゲル・アンデルセン所長は「78億人が毎晩ステーキを食べるなんて、できない」といっているそうです。

人工肉の串焼き(Pixabay)

 クラインさんは、肉を全部やめろとはいいません。
 できるところから代替品、人工肉への切り替えを進めようといいます。人工肉のひとつの方向は植物由来のタンパクを加工することであり、もうひとつは培養技術で食肉を細胞レベルで増やす方向です。どちらもすでに多くの方法があり、商業化も進み、人工肉とは思えない完成度を誇る製品も出てきました。

 ただしすべてを民間に任せていては、切り替えは進まない。
 現状維持を望む人たちがたくさんいるので。
 政府が政策をつくり、予算を組み、風力や太陽光などの代替エネルギーに向けた費用の数分の一でもいいから「代替タンパク」に向ける、といった努力が必要でしょう。

カシューナッツ (人工チーズの原料)

 政治が動くためには、有権者の声が必要です。
 人工肉というと、まだまだ引いてしまう人が多い。ぼく自身もつい最近までそうでした。でもいまではハンバーガーの中身は人工肉でまったくかまわないと思います。ヨーロッパではグルメ級の人工チーズも開発されているというから、早く試してみたいですね。
 そういう類の声が、少しずつ増えるんじゃないでしょうか。
(2021年5月6日)