アメリカ議会といえば、自由と民主主義の殿堂というより、いまはもう多くの人にとって魑魅魍魎の巣窟ではないでしょうか。議論をつくすよリ暴論をぶつけあい、分断と対立、陰謀とフェイクがはびこっている。1年前には暴徒が議場に乱入してクーデター騒ぎまで起きました。
いや人間だけじゃありません。
なんとキツネまでもがアメリカ議会を襲撃しようとしています。この数日、議会の敷地内で議員や議会スタッフ、ジャーナリストなど「半ダースくらい」の人がキツネに噛みつかれたのです(April 5, 2022, The Washington Post)。

議会の警備を担当する警察が注意を呼びかけました。
「議会敷地内、周辺で、攻撃的なキツネに襲われた例がいくつも出ています。キツネに近づかないでください」

被害者のひとりは、カリフォルニア州選出のアミ・ベラ下院議員でした。
4日夕方、歩いているときに後ろから噛みつかれたといいます。犬かと思ってふり返ったらキツネだった。あわてて持っていた傘を広げて撃退すると、議事堂のあいだに逃げていったとか。
「10年議員をしてて、こんな奇妙なことははじめてだ」
医学知識のあるベラ議員は、ただちに病院に行き狂犬病の予防注射を受けました。アメリカでは野生動物を介した狂犬病の感染が起きているからです。
もうひとり、キツネに噛まれた雑誌記者はいっています。
「ワシントンじゃ、こんなことまで起きるんだよね」
被害が広がったため警察の動物対応チームが出動し、5日、問題のキツネを捕獲しました。

(議会警察 Twitter より)
もちろんアメリカのことですから、「人道的な方法」で捕らえたと警察はいっています。また捕えたキツネは「処分」なんかしません。遠くに持っていって自然界にもどします。
捕まったのはアカキツネ、日本にいるキツネとおなじです。ぼくも北海道でよく見ますが、アライグマやイノシシとちがってキツネが人を襲ったという話は聞いたことがない。キツネが攻撃的になっていたというなら、それはすでに狂犬病に感染したからじゃないかと疑いました。狂犬病に感染した動物は、犬でもキツネでもコウモリでも攻撃的になるからです。

でも専門家によると、子育てをしているときもキツネは攻撃的になるらしい。
捕まったキツネは、どこかに穴を掘って子育て中だったのかもしれません。まだほかにもいる可能性がある。ということで、議事堂周辺にはキツネ捕りのワナがいくつかしかけられているそうです。
こんなところにまで来るなんて、よほど政治好きなキツネだったんでしょうか。
(2022年4月6日)