アジアでもっともコロナ対策が進んでいるのはどこか?
ブータンです。なんと、75万の国民の63%がコロナ・ワクチンの接種を受けている。おとなにかぎれば90%以上。アジア最先端です(How the Tiny Kingdom of Bhutan Out-Vaccinated Most of the World. April 18, 2021, The New York Times)。

幸運もありました。
全員に必要なワクチンを3月、インド政府から手に入れたのです。まだインド製のワクチンに余裕があったころの話。その後インドは感染が急増して輸出どころではない。幸運な時期にワクチンを手に入れました。
そしてワクチンがアストラゼネカ製だったこと。ファイザーやモデルナのワクチンにくらべ、ふつうの冷蔵庫でも保管できるアストラゼネカのワクチンは、ブータンでも利用可能なワクチンでした。

でもほんとうの鍵はこの国のあり方でしょう。
ブータンは「幸福の国」として有名です。物質的な富ではなく、全国民の総幸福量をどうすれば増やせるか、そのことを考えつづけている。その延長上に、今回のコロナ対策もありました。
国連ユニセフの担当者はいっています。
「ワクチンの実施数が多いだけでなく、その進め方が優れている。国のトップから地域社会のリーダーまで、みんながワクチン・キャンペーンに参加している」

(ブータン保健省サイトから)
町をちょっと離れればヒマラヤの山また山、車が通れる道もありません。僻地の村には雪と氷の道を歩いて行かなければならない。その役割を果たしたのが、国王の名を冠したボランティア組織「平和防衛隊」だったといいます。
国王自ら憲法をつくり民主化を果たした国だから、国民の信頼は厚い。その国王のもとで、みんながみんなのためにコロナ防衛に動いたということでしょう。

小さく貧しい国かもしれないけれど、国民のこころはゆたかです。
国連で世界に向けて「幸福を考えよう」と訴える国。
その訴えがもとで、国連は毎年各国の幸福度を調べ、「世界幸福度ランキング」を発表するようになった。それはこのサイトでも取りあげています(3月21日)。
そのブータンだからこそ、ワクチン対策が進んだのではないかとぼくは思います。
(2021年4月19日)
追記)コロナ・ワクチンの接種率は、ブータン63%に対して、イスラエル62%、イギリス46%、アメリカ39%。日本は4月9日までの数字しかなくて、1%です。