先進企業のリチウム

 リチウムの資源争奪がはじまっています。
 電気自動車などの高性能電池に欠かせないリチウムの確保に、アメリカが動き出しました。そのニューヨーク・タイムズの記事を読んで、へええ、と思ったことがあります。
 先進企業はたんにリチウムの確保を目指すだけでなく、「クリーンなリチウム」をめざしているというので(The Lithium Gold Rush: Inside the Race to Power Electric Vehicles. May 6, 2021, The New York Times)。

ネバダ州 (リチウム採鉱計画が進んでいる)

 アメリカのネバダ州北部やカリフォルニア州のソルトン湖では、大規模なリチウム採掘計画がはじまっています。ひとつは露天掘り、ひとつは地下の熱水からリチウムを取りだす方法。いずれも放っておいたらひどい環境汚染が起きると反対運動がはじまりました。

ソルトン湖(カリフォルニア州)

 ここで記事にあったのが、IRMAという団体です。
 責任ある採鉱保証機構とでもいうんでしょうか。世界各地の鉱山を調査し、安全でクリーンな操業が行われているか、検証して報告する団体です。
 いまは21世紀、そういう団体があるんだ。

 しかもその団体に、フォードやBMWという世界的企業が加わっている。企業だけでなく、ヒューマン・ライツ・ウォッチのような人権団体の名前もあります。

 IRMAメンバーの一覧を見て、いろいろなことを考えました。
 自動車会社が、自分たちの車はクリーンなリチウムを使ってますと主張する。それにお金を出している。そんなの信じられるだろうか?

 でも、ないよりずっとましかもしれない。少なくともリチウムのサプライ・チェーンはある程度の透明性が確保される。鉱山のひどい労働やヒ素のような有毒物質のたれ流しも、もしかしたらわかるかもしれない。

 そしてまた、国連機関のような公的な団体ではないこともIRMAに納得できる材料となります。なぜなら国連機関だと中国のような大手出資国の意向に逆らえないことが、こんどのコロナでもわかりましたから。

 欧米の企業はたんにひと目を気にしているだけかもしれない。でもこういう努力を積み重ねている、少なくともそう見えるように努めていることには好感を持ちます。

 ちなみに、IRMAのメンバーに日本企業の名前はありませんでした。
(2021年5月11日)