アメリカのカマラ・ハリス副大統領に「サインネーム」が付きました。
サインネームというのは、カマラ・ハリスさんを表す手話表現です。
ニューヨーク・タイムズが動画を伝えています(What Matters in a Name Sign? July 16, 2021, The New York Times)。
あえてことばで説明するなら、カマラ・ハリス副大統領のサインネームは、「右手親指、人さし指、中指の3本の指をすぼめ、それをちょっとひねりながら上に向かって開く」です。
下の画像は、そのはじまりの手形です。タイムズ紙のサイトのスクリーンショットなのでちょっと画像は荒いですが、およその感じはわかると思います。

(開始部分)
日本の手話になじんでいる人なら、右手を「終わり」の最後のようにすぼめ、そこから3本の指を「花」をイメージしながら上に開く、ということでしょうか。
下の画像は、「開いた」3本指です。

(終了部分)
ハリス副大統領の手話名は、もちろんアメリカのろう者がつくりました。
アメリカ手話にはアルファベットを表す「指文字」という表現方法があるので、ハリスさんも最初はこの指文字で表現されたでしょう。でも指文字はハリスという名前を「H・A・R・R・I・S」と発音するのとおなじで、いいづらいし長ったらしい。ろう者はそんなめんどくさいことはせず、すぐに「手話名」を発明します。それが上記の手話表現でした。
3本指は、ハリスさんの「女性」と「黒人」と「インド系」という3つの属性を表現しています。その3本指が開くのは、花をイメージしているから。ハリスさんのファーストネーム「カマラ」は、サンスクリット語で「ハス」という意味なので、それがサインネームに取りこまれました。なんとしゃれたサインネームであることか。
アメリカのろう社会は、彼女の手話名をどうするかで活発な議論をしてきたといいます。そしていくつかの候補が現れ、ネット上で投票が行われました。いちばんの票を集めたのが、ここに紹介したサインネームでした。
こういう名前を考え、決めるって、きっと楽しい作業だったことでしょう。
とはいえ、アメリカでも日本でも、ろう社会は自分たちのきらっている人にはひどいサインネームを付けることがあります。「トランプ」のサインネームは何だったのか。タイムズはそこは伝えていません。品位ある新聞ですから。
(2021年7月27日)