収穫の前に

 デイケアのメンバーが田んぼに出てきました。
 はさがけ(稲架掛け)の準備です。はさがけは、刈り取った稲を干すこと、そのための木組みを田んぼのなかに設置します。50年くらい前まではよく目にしましたが、機械化が進んだいまの農業ではめったにお目にかかれません。
 でもこの天日干しのほうがいい米ができると、いまでもはさがけで米作りをしている農家があるそうです。浦河ではここ以外にはないでしょう。

 浦河ひがし町診療所の“田んぼワーカー”、木村貴大さんが中心になっての作業でした。デイケアのメンバー、スタッフ10数人が参加しています。
 はじめに田んぼの真ん中の稲を少し刈り取り、そのスペースに丸太で木組みをつくります。力仕事は男手で、刈りとった稲を束ねるのは女手でと、示し合わせてもいないのに役割分担ができていました。

 広い空の下での手作業はのびのびとして、世間話と笑いと鼻歌が絶えません。それを後ろからカカシの人形たちが見守ります。

 去年までのはさがけは、柱5本でつくりました。でも最近は稲の収量が増え、干すスペースが足りなくなるので、ことしは最初から柱6本でつくりました。材木はいずれも、田んぼを貸してくれる小野寺信子さん宅の物置から持ち出しています。木組みを縛る紐は、牧草をつくる農家から分けてもらいました。
 できた木組みに、刈り取ったぶんの稲をかけ、おしまいです。
 ぜんぶで2時間足らずの作業でした。

 はさがけができ、今週末はこの田んぼで稲刈りです。
 以前、稲刈りは地域の人が200人も集まるお祭りでした。焼き肉の煙が漂い、子どもたちが走りまわるにぎやかに秋の1日だったのです。それがコロナのせいで、去年もことしも規模縮小になりました。こんなオープンスペースで感染なんてありえない、とは思うけれど、北海道はまだ緊急事態宣言がつづいているのでやむをえませんね。

元浦川の支流で(9月6日)

 田んぼの横の小川を見ると、もうサケの遡上がはじまっていました。
 このところ朝晩の涼しさが増している浦河は、カエデやナナカマドがところどころで紅葉しはじめています。
(2021年9月7日)