自由と民主主義のために、台湾はウクライナを支援する。
台湾の駐米代表、シャオ・ビキム(蕭美琴)さんがワシントン・ポスト紙に寄稿しました。ウクライナも台湾もともに、専制国家に屈することはないと(Opinion: Ukraine has inspired Taiwan. We must stand against authoritarianism. By Bi-khim Hsiao. March 25, 2022, The Washington Post)。
実質的な「駐米台湾大使」のアメリカ世論への訴えです。でも先日(3月16日)このブログで駐米中国大使、秦剛(チン・ガン)さんのポスト紙への寄稿を紹介したので、ここは台湾の言い分も紹介しましょう。シャオ代表はこういっています。

・・・ロシアの侵略に対してウクライナが示した決意と粘り強い抵抗に、台湾は励まされている。われわれは近年、軍備を増強して自衛能力を高め、中国がロシアのような誤った判断をしないよう抑止することに努めてきた。
中国がなんといおうと、台湾はこれまで決して中国の一部でなかった。台湾の将来は平和的に、民主主義によって決められなければならない・・・
最近の世論調査では、ますます多くの台湾人が「自分たちは台湾人だ」(中国人ではない)と考え、中国との統一より自立を選び、軍備増強を支持するようになったといわれます。その一方、多くの台湾人は中国が軍事行動を起こしてもアメリカは参戦しない、自力で対処するしかないと捉えている。
台湾の境遇は、見方によってはウクライナよりもずっと脆弱です。

その生存、というより存在への模索を、台湾出身の作家、李琴美(り・ことみ)さんが29日朝日新聞に寄稿しました。さすがに文学者らしく、ことばが読むものの胸にしみこみます。
李さんは、戦争を行うのは「国家」だといいます。そして国家は実体としては存在しないのに、「共同幻想として現出し、逆に人間を支配する」、その共同幻想が「ウクライナとロシアは歴史的に一体だ」というロシアの主張や「台湾は中国の神聖にして不可分の一部だ」という物語を生むと指摘しています。

そうなんです。国、国家という枠組みにしばられているかぎり、ぼくらは自由にはなれない。そう共感して読みながら、李さんのいっていることはおなじ台湾の学者、呉叡人さんがいっていることと重なるとも思いました。
「国」ではない台湾だからこそ、こういう発想が出てくる。それはこの地球上の最もラジカルな政治哲学でしょう。
いまぼくにできるのは、多くの台湾人とウクライナ人の声を聞きつづけることです。
(2022年3月30日)