中国軍の急速な増強で、台湾への武力侵攻が現実味を増しています。
アメリカの軍事専門家は、それが今後6年以内に可能と見ているようです。
アメリカ軍の圧倒的な優勢は、とっくのむかしになくなっているんですね。
アメリカ議会には台湾侵攻防止法という法案が提出されていて、エレーヌ・ルリア下院議員がその成立を訴えていました(Opinion: Congress must untie Biden’s hands on Taiwan. Rep. Elaine Luria, Oct. 11, 2021, The Washington Post)。

ルリア議員は、いまの法制度のもとでは中国の台湾侵攻に際してアメリカ軍はすぐに動けない、だから迅速に反応できるよう法制度を改めるべきだといいます。その目的は、初動体制を確保して軍事衝突を局地戦にとどめる、米中の全面戦争に発展させないことです。
ルリア議員はアメリカ海軍に30年勤務し、戦闘艦艇の艦長も務めました。議論の是非はともかく、軍事力の運用に通暁した専門家の現実的な視点だと思いました。

台湾問題にかんして、日本にははこういう専門的、現実的な視点が希薄です。政治学者や外交評論家の意見はあるし、そういうのを2,3読んだ気はするけれど、説得力を感じたことはありませんでした。
かといってぼくは、中国の暴虐を許すな、日本も軍事力増強を、なんて短絡した考えに陥りたくもない。
じゃあどうすればいいか。
とりあえずは、さまざまなつながりを地道に構築していくことしかない。外交はもとより、経済、文化、人の交流、などなど。軍事対決にくらべると迫力はないけれど、またそれで中国の武力侵攻を止められるとは思わないけれど。

ときどき、視点を変えることが必要です。
たとえば中国の視点に立ってみる。台湾は統一しなきゃならない、でも軍事行動が失敗したら習近平政権は崩壊する。だから迅速に、圧倒的に、完璧に台湾を軍事占領しなければならない。
それって結構ハードル高いよな。そう思わせるためには、何をすればいいか。
ひとつは、これもアメリカの専門家の受け売りだけれど、少しでも持久戦に持ち込むことでしょう。じゃあ何をどこまで、どう持久するか・・・
台湾問題は、ぼくのようなしろうとがああだこうだと論を張るのは危険です。そのことは肝に銘じておきたい。そのうえで、アメリカと台湾、そしてときどき韓国などの“現実感ある国”の論調を見ていたいと思っています。
(2021年10月12日)