ドイツが、23日からイギリス人旅行者の入国を禁止します。
イギリスから感染力の強いコロナ・ウィルスの変異株が入るのを防ぐためです(Covid Live Updates: Germany Bans Most Travel From Britain Over Variant Fears, May 22, 2021, The New York Times)。
この記事を読んで、一瞬ぼくは混乱しました。
イギリスではワクチンの接種が進み、安全な社会がもどってきたというのに、その国の旅行者を止めるってどういうことだろうか。
でも記事を読んでわかりました。ドイツが恐れているのは最近イギリスで見つかったコロナ・ウィルスの新しい変異株だったのです。

新しい変異株は B.1.617、インドから来たものです。
このコロナ・ウィルス「インド型」の感染が、20日までにイギリスで3千人を超え、前の週より2千人も増えました。この事態をドイツは警戒したのでしょう。
当然です。
インド型のB.1.617は、二重の変異をとげ、感染力が強く重症化しやすいといわれます。
おそらくB.1.617のせいもあって、インドはいま世界でもっともひどいコロナ禍に見舞われています。WHOによれば感染者2千600万人、死者は29万5千人、とても終息のきざしは見えません。そうなったのはモディ政権の失政でもあるけれど、変異株のせいでもある。

この1年あまり、コロナは変異しつづけました。変異はたくさん起きているけれど、流れを変えたのは去年9月に見つかった「イギリス型」変異株でしょう。それまでの“オリジナル”のコロナ・ウィルスにくらべて感染力、病原性がともに強まった。これでイギリスのコロナ禍は急速に悪化し、その波がヨーロッパ、アメリカにも伝わりました。
日本でも、京都大学大学院医学研究科の研究によれば、京都や大阪のコロナ感染のほとんどは、最近このイギリス型になっているようです。
だから従来の対策では追いつかなくなったのですね。

インド型は、イギリス型よりさらに「進化」している。いったん国内に入ったらこれまでのイギリス型よりも深刻な被害をもたらしかねません。ドイツが心配したように日本も心配したほうがいい。オリンピックなんていってる場合ではないのです。
(2021年5月23日)