エリザベス女王の写真を撤去する。
オクスフォード大学の学生がこう決議し、実際に学内にあった女王の写真を撤去しました。
さすがイギリス。
保守派からは一斉に強い反発が起きたけれど、とりあえず表現の自由は守られているとワシントン・ポスト紙が伝えています(Oxford students remove photo of Queen Elizabeth II, sparking latest battle in Britain’s culture wars. June 9, 2021, The Washington Post)。

事件が起きたのはオクスフォードの中心にあるマグダレン・カレッジ。そのホールにかけてあったエリザス女王の写真を、「王室の展示は植民地時代を想起させる」と問題視した学生たちが議論の末、撤去を決めました。
植民地時代のイギリスの暗い過去に向きあう動きのひとつととらえる人びとがいる一方で、当然ながら保守派は学生の無知、行き過ぎた“キャンセル・カルチャー”だと反発しています(キャンセル・カルチャーは、一事をもって万事を否定する、みたいな概念です)。
大学当局は、ホールの運営は大学ではなく学生が決めることだと容認しています。

このニュース、ワシントン・ポスト紙とBBCが伝えているのですが、伝え方に差があっておもしろい。BBCは撤去にあたっての学生たちの議決は賛成10、反対2、保留5だったといい、くわしい議論の経過、中身を伝えています。学生たちが何をいったか、ですね。
一方ポスト紙は、これが去年5月、アメリカで起きた「BLM、ブラック・ライブズ・マター」の影響を受けているといっています。学生たちは何に動かされたか、ですね。
たしかにイギリスでは去年、BLMに共鳴するデモや抗議行動が各地で起きました。オクスフォード大学でも、校内にある白人優越主義者、セシル・ローズの銅像を撤去せよという声が上がっている。このときは撤去にいたらなかったけれど、今回学生たちは女王の写真を撤去したことで運動を一歩前進させた形となりました。

BLM、ブラック・ライブズ・マターはアメリカだけでなく、ヨーロッパにも広く、深く、伝わっているようです。ぼくは記録をつけてはいないけれど、ドイツでもフランスでも、多くの人たちがBLMに共鳴し、街頭行動に出ていたことは記憶に新しい。
あとからふり返ったとき、BLMは21世紀の大きな社会潮流のひとつになっているはずだという確信に近い思いがあります。
(2021年6月12日)