子どもは欲しくない

 子どもは欲しくない、というアメリカ人が増えています。
 人口増加の勢いは落ち、女性の出生率も6年連続で下がっている。若い国というイメージが強かったアメリカに、人口減少、少子高齢化への道が見えてきました。世論調査で定評あるPEWの調査です(More Americans say they’re not planning to have a child, new poll says, as U.S. birthrate declines. Nov. 21, 2021, The Washington Post)。

「これから先、あなたが子どもを持つ可能性はどのくらいあると思いますか」
 PEWの調査はこの質問を、ことし10月、18歳から49歳の女性と、18歳から59歳の男性の、いずれも結婚していない人に聞いています。
 全体の26%が、子どもを持つ「可能性はかなりある」と答えました。これは3年前の2018年には32%だったので、6ポイントの減少です。
 一方、「たぶんそうはならない」と答えた人は、2018年の16%から21%に増加しました。
 全体として、子どもを持つ意欲が減っているのです。

 たぶん、または確実に、子どもは持たないと答えた人の56%が、その理由を「ただ欲しくないから」と答えています。このカテゴリーの人たちは、かつては経済的理由やパートナーが見つからないことなどを理由としていました。いまはそうした明白な理由に代わって、「ただ欲しくない」が増えています。
 それは、ただお金があればいいという問題ではなく、いまの世の中は子どもを生んで育てようという意欲をそいでしまう、あれこれのしくみがますます強くなっているということではないでしょうか。
 それはなんなのか。

 アメリカだけでなく、日本でも韓国でもドイツでも、子育てはますますむずかしくなり、女性だけでなく男性までもが子どもを持とうと思わなくなっている。これはもう、少しくらい子ども手当を増やして解決できる問題ではありません。
 それは学者や専門家、政治家が取り組むべき大テーマでしょうか。

 とっぴもないようですが、ぼくは「母親が子どもを育てる」というしくみに無理があると思うようになりました。もちろん父親も子育てに参加するべきです。でもそうやって親だけに任せるのではない、「みんなで育てる」という方に向かうことはできないだろうか。むかしのように。
 子どもを、「安心して育てられる」ようにするには何が必要だろう。
 浦河という、北海道の小さな町で行われているいくつかの子育てを見て、ぼくはそんなことを思うようになりました。
(2021年11月23日)