高齢出産が増えている。
高等教育を受けた人ほどその傾向が強い。
日本でもアメリカでもそれはおなじです。でもいまアメリカでは、高等教育を受けていない女性にもその傾向が広がっていると、ニューヨーク・タイムズが伝えています(Why American Women Everywhere Are Delaying. June 16, 2021, The New York Times)。

「子どもは産めない。あたしはキャリアと仕事が必要。でなきゃ両親のしてきたことがむだになる」
看護助手として働きながら美容学校に通うルツ・ポルティオさんは、将来ネイル・アートの店を持つのが夢だとか。それまで子どもを持つつもりはありません。母親は16歳で自分を産んだけれど、自分はそうはならない。
自分の人生は自分で決めたい。そのためにキャリアを求めています。
少なくとも子どもを産むことに関して、母親とおなじにはならないと考える女性が増えています。
それが、アメリカの人口増に歴史上はじめてブレーキをかけました。
若い女性のあいだで過去10年に起きた変化は劇的だと、人口問題の専門家はいいます。それは出産年齢の高齢化とともに、子どもを持つ経済的な余裕がないこと、より多くの女性が結婚しないことからきています。

プリンストン大学で低所得層について研究してきた社会学者、キャスリン・エディンさんはいいます。
「1990年代にくらべると、みんな子育てによって何を失うか考えるようになった。最貧困層の女性ですら、いまはキャリアを積むことのほうに向かっている」
コロラド大学の人口学者、アマンダ・スティーブンソンさんのコメントが印象的です。
「大きな変化のひとつは、女性の望まない妊娠が減ったことでしょう。いまは生まれる子どもが減っているけれど、みんなが自分の人生を生きようとしている。それってすごいことじゃないですか」
自分の人生を自分で決められない。そんな時代は、少しずつ過去のものになろうとしています。

日本の出生率の低下は、そうならざるをえないように女性が追い詰められた結果という感じがするけれど、アメリカでは女性たちが自らの生き方を「選び取っている」部分が強いのかもしれません。
産めよ増やせよしか頭にない日本のえらそうなオッサンたちには、まず理解できないことでしょうけれど。
(2021年6月21日)