ひがし町診療所デイケアで、しめ縄をつくりました。
9月に行った稲刈りで、あまったワラを使っての作業です。
コメと関連産業はすべて担当の「田んぼワーカー」、木村貴大さんが先生になりました。
乾燥しきったワラにスプレーで水を含ませ、太いところは金槌で叩いて柔らかくします。スパゲッティ2人分くらいの束の根本を縛り、先を3つに分けてよっていきます。

むかし、といっても半世紀前、農村ではどこでもこうやってワラ縄をつくっていました。大体は夜なべ仕事、土間でじいちゃんがワラを木槌でトントン叩きながら、手と足を使ってひとりで何十メートルもの縄をつくっていたものです。
今回はしめ縄だから、長くなくてもいい。ワラ一本分の長さ。
なれればかんたんだけれど、コツがわからないととまどいます。

小さな束をひねってよったら、その束ふたつを、ひねったのと逆の方向によっていく。ひねるのとよるのが逆方向。それがわかればかんたんです。
ああでもないこうでもない、ちがう、逆だ、わかってね-な。
ヤッター、という声もあれば、イラチの声もある。30分ほどで十数個のしめ縄ができあがりました。
もう年末だねと、スタッフがつぶやきます。
しめ縄はできたけど、餅つきはどうするんだろう。去年はコロナで診療所ではできなかったけど、ことしはまだ決まってないよね。
このときの、別のスタッフの反応がぼくにはとても興味深かった。
メンバーが餅つきって言い出さないから・・・。
デイケアのメンバーから、「餅つき、どうなるの」「しようよ」と声が出ていない。だのにスタッフの方からやろう、やろうと引っ張るような形は、どうなんだろう。
この間合いの取り方に、浦河ひがし町診療所の熟成が表れています。

あらかじめ予定を立て、目標を設定し、それを達成する、というのがふつうのやり方だとしたら、それじゃなんだかもうひとつおもしろみがない、というのがこの診療所の人びとの感覚です。
予定のないところで、予想もしないところで、何事かが自然に起こり、燃えあがっては移ろっていく。まるで焚き火が燃えるように。ジャズのセッションのように。火は自然に消え、どこかでまた別の火がつく。そのくり返し。それがひがし町的ということなのでしょうか。
(2021年12月9日)