彼岸のような日に

 お盆です。墓参りの季節。
 ひがし町診療所デイケアも、きょうは墓参に出かけました。
 去年亡くなったデイケアのメンバー、野呂テイ子さんをしのんで。

野呂テイ子さん(2017年)

 最後まで元気で丈夫な人でした。デイケアのプログラムに積極的で、田植えや稲の収穫などでかくしゃくとした姿を見せたものです。むかし取った杵柄だったのでしょう。去年90歳になり、まるで近所に出かけるようにふっといなくなりました。
 その野呂さんのお墓に、デイケアで仲間だったメンバーが手を合わせます。
 いっしょに行ったみんなも線香をあげました。

 墓地は浦河から車で20分あまりの幌満というところです。
 晴れて、日中の気温が18度。関東ならまるで秋の彼岸のようなさわやかな日でした。
 そのさわやかさは、墓地のすっきりしたたたずまいからも来ています。本州から行ったぼくには意外だったのですが、北海道では墓前に供えた花と供物は、墓参が終わると持ち帰るのですね。むかしは墓参が終わると、墓の前でみんなが輪になり、その場で供物をいただいたとか。もちろん酒を供えれていればそれも飲んだのでしょう。最近は供物は持ち帰り、家でいただくようになりました。花も、持って帰り家の仏壇などに飾るそうです。

 多くの墓が、すでに墓参を済ませていました。
 でもそこに枯れた花や食べ物が残っていない。食べ物をカラスがつついて荒らすなんていうこともない。だから墓地全体がすっきりしていたのです。
 なかなかいい風習ですね。

 風習のちがいといえば、沖縄では墓碑の前にちょっとした広場が付いているものをよく見かけました。先祖の霊を祀ったあと、そこが宴席になるのだそうです。歌も踊りもできるスペース。そうやってみんなが墓参を楽しむのであれば、故人も浮かばれます。
 沖縄の場合はその場で、北海道の場合は家に帰って。どちらも先祖を祀る宴をとおして、一族の結びつきを強めているのでしょう。

 きょうの墓参は診療所デイケアのプログラムの一環でしたが、コロナのせいで人数を絞りました。来年以降は、もうちょっとにぎやかな形に変わるかもしれません。
(2021年8月13日)