ついにというか、ようやくというか、アメリカが「ジェンダーX」のパスポートを発行しました。
性別欄が男(M)でも女(F)でもない、“X”のパスポートです。
所持人は男性でも女性でもない、そのほかのジェンダーだと国家が明記した書類です。

パスポートの性別欄にXを加える動きは、以前このブログでも紹介しました(7月1日)。ブリンケン国務長官は「すみやかに実施したい」といっていたけれど、それから3か月で実現したことになります(U.S. Issues First Passport With ‘X’ Gender Marker. Oct. 27, 2021, The New York Times)。
性別欄Xの最初のパスポートが誰に発行されたか、国務省は明らかにしていませんが、人権団体「ラムダ・リーガル」によれば、退役軍人のダナ・ザイムさんです。ザイムさんは身体とこころの性が一致しない「インターセックス」、LGBTQIの「I」にあたります。

ザイムさんは2015年、国務省を相手取り、「ジェンダー中立のパスポートを発行すべきだ」と訴訟を起こしました。ザイムさんは出生証明証では男性ですが、運転免許証では女性です。
連邦地方裁判所は2016年、ザイムさんの訴えを認める判断を示しました。
しかし国務省は動かなかった。このためザイムさんは上級審に訴えるなど、何度か法廷闘争をくり返しています。ことしになってやっと国務省がザイムさんの訴えを認め、パスポートの性別欄にXを認める形となりました。
新しいパスポートを受け取ったザイムさんはいっています。
「いろいろあったけど、ようやく手に入ってよかった。興奮と安堵の大きなため息です」
パスポートには、たしかに性別欄にXと記されていました。
「私は未来のために活動した。これでインターセックスの子どもたちも胸をはれる」

こうした変化は、トランプ政権のもとではむずかしかった。バイデン政権になってようやく可能になったということでしょう。
政権交代のない国ではこういう変化は起きません。
アメリカが特別ではない。パスポート性別欄のXは、すでにカナダ、オーストラリア、アルゼンチン、ネパール、ニュージーランドで認められています。
どの国も「夫婦同姓」だの「男系にかぎる」なんてのより、ずーっと先を行っています。
(2021年10月29日)