浦河町で、精神障害者が興奮して暴れ、抑えようとした人がケガをする騒ぎがあったと、5月19日にこのサイトに書きました。
この「騒ぎ」、思いのほか深刻だったようです。
暴れたのを「抑えようとした人」がケガをしただけでなく、抑えられた精神障害者がそのときに相当な暴力を受けていたという証言があるからです。精神障害者への虐待とも見られるケースでした。
この事件に浦河ひがし町診療所は関係なくても、他人事とはいえません。いくつかの不幸な条件が重なれば、どこでも起きる事件ですから。
そうならないようにするために、どうすればいいか。そこで診療所は、世間でよくやる「原因を究明し、再発の防止を図る」のとはちょっとちがう方向に向かいます。「支援者をどう助ければいいか」を考えます。

2日、ひがし町診療所では、「支援者への支援」がミーティングのテーマでした。
診療所の患者やデイケアのメンバーが抱えるトラブルや困難に、看護師やワーカーはどうかかわればいいか。どうやって持続したかかわりをつづけるか。
支援者がひとりで抱えこんだらつぶれてしまう。
誰かひとりが責任を持つしくみは無理だ。
支援者をみんなで支えること、たくさんの人がかかわること。
メンバーの安心だけでなく、支援者の安心も。
苦労だけでなく楽しさもある支援に。

さまざまなことばが出てきました。大事なのは、精神障害者や生活困難者が孤立しないよう、支援者が彼らを支えるのとおなじように、支援者もまた多くの人に支えてもらう必要があるということです。孤立しないように。抱えこまないように。
ミーティングの話から思ったのは、精神障害者に対して暴力をふるってしまった人の場合もそれがいえるのだろうということでした。事件を起こしたその支援者は孤立し、助けが必要だったのではないか。でも周囲は、有能な支援者だからと、本人に任せっきりにしていたのではないか。

浦河ではよく、精神障害者に対して「つらいとき、苦しいとき、ことばにして伝えよう」といいます。その呼びかけは、精神障害者に対するのとおなじように、支援者と呼ばれる人びとにも向けられるべきなのです。
(2021年6月3日)