文系にも出番を

 コロナの感染防止に、アクリル板の仕切りなどは効果がない、むしろ有害な場合もあると8月22日に書きました。
 コロナ・ウィルスは、「こまかい飛沫」で広がるから、タバコの煙とおなじようにアクリル板では防げないからです。アメリカの研究者がこうした現象をつきとめています。

 それを追認するかのように、日本の研究者も「コロナは空気感染が主たる経路」というレポートをまとめました。そうした科学的な理解にもとづいた対策を唱えています(8月27日付朝日新聞アピタル)。

 この記事によれば、日本の厚労省はコロナ感染は「接触感染」が一般的だといっていますが、WHOやアメリカのCDCは「エアロゾル」による感染を重視しています。エアロゾルは、タバコの煙のようなこまかい飛沫のことだから、空気感染と言い換えてもいい。
 今回出た日本の研究者の提言は、最新の理解でコロナ対策を進めるべきだといっています。つまり接触感染より空気感染を「主たる経路」とみて対策を取れ、というのですね。
 そのために不織布のマスクを使うことや、換気装置のさらなる活用などを勧めています。

 まっとうな、説得力のある提言です。
 しかもこの提言は東北大学の本堂毅准教授らがまとめ役で、感染症の専門家や医師32人が賛同者になっているというから、科学的には最高レベルの提言といってもいいでしょう。
 厚労省、政府官邸はこの提言を受けて対策をとってほしい。

 そう思う一方で、ぼくは、この「最高の提言」に、さらに提言したいことがあります。
 それは「感染症の専門家や医師」だけでなく、社会学者や心理学者など、文系の専門家もぜひ加えてほしかった、その上で提言をまとめてほしかったということです。
 なぜなら、理系のみなさんの提言は、つねに現状より厳しい対策を求める傾向があるからです。
 たしかに感染防止のためにはやむをえないかもしれない。けれどぼくらはもう防止対策にあきあきしている。かなりの人が「もういやだ」という気分を強めているんじゃないでしょうか。

 それでもなお感染対策を進めるにはどうすればいいか。これは文系の出番です。
 たとえばアメリカの社会学者、ゼイネップ・トゥフェクチさんが、重要でない対策をやめるなど、メリハリを付けろといっていることをこのブログでも書きました(4月21日)。
 小学校の教室のアクリル・パネルなどはもうやめたら、と、ぼくは思います。
 人ごみのない広い公園では、マスクなんかしなくてもいい。
 その一方で、密は避ける、換気はこれまで以上に励行。
「世間の目対策」から「本来の感染対策」へ。
 それを進めるのは文系であり、ひいては政治であると思います。
(2021年8月28日)