服が売れはじめた

 やっとこれで自由になる。
 ニューヨークの会社員、ダニエル・ストークスさん(31歳)は待望のコロナ・ワクチン受け、安堵のため息をつきました。
 でもハッとします。いけね、着るものがない。この1年、ラウンジウェアとパジャマだったから。
 新しいジーンズとカーディガン、靴をネットで衝動買いしたら450ドルにもなった。
「なんてこった、会社にもどらなきゃいけないなんて」

 アメリカで“通常服”が売れだしたとワシントン・ポストが伝えています (Americans are starting to buy real clothes again. March 19, 2021, The Washington Post) 。

 ブルックス・ブラザースではスーツ、ドレスシャツやタキシードまでが売れだした。別のメーカーではリゾート・ウェアや水着も。
 アメリカではワクチンの接種が進み、意外に早く「集団免疫」が達成されると誰もが思うようになったのでしょう。専門家はいいます。
「アパレルとフット・ウェアが急激にもどっている。みんな社会生活がもとどおりになるので新しい服がほしい、以前のような毎日を楽しみたいと思ってるんです」

 コロナ以前の衣類は黒が基調だったけれど、明るい色、躍動感のあるデザインが目立つようになりました。どんな分野の服も。
「みんな楽観的、大胆になってきたんじゃないでしょうか」
 日本でいうリクルートルックや結婚式用の服も売れだしている。

 しかし、と別の専門家はいいます。
「一時的に売れてはいるけれど、これは“偽陽性”のようなもの。いつまでもつづくわけはない」
 なにしろ1千万人が失業し、400万人はいまだに復職していない。本物の回復とはちがうというのです。それでも、トンネルの出口は見えてきました。

 3月19日時点でのワクチンの接種状況を、欧米のメディアと厚労省統計でまとめてみました。
 アメリカ 23%(7700万人。1日の接種数250万回)
 イギリス 39%(2600万人。1日の接種数40万回)
 日本  0.5%(58万人。1日の接種数5万回)*

 日本は先進国で最低なだけでなく、いまや中国や韓国よりも遅れている。でも国民は文句をいわずにマスクをしているので、政治家は楽です。
(2021年3月20日)

*4月1日訂正)当初日本のワクチン接種数を1日「7千人」と書きましたが誤りでした。厚労省統計を見ると3月10日から19日までの平均は1日4万7千回です。3か国の数字はいずれも「2回目の接種」の人が含まれています。